脳挫傷

脳挫傷について

脳挫傷（cerebral contusion）とは、頭部に強い衝撃が加わることにより、脳が損傷を受ける状態を指します。この外傷の結果、脳内の特定の部位で局所的な障害が生じることが一般的ですが、衝撃の反対側の脳表面にも広範囲に障害が見られる場合が多いです。その理由は、外的な圧力により脳が慣性を持って動き、硬い頭蓋骨と衝突することで脳が挫滅されるためと考えられています。

脳挫傷のメカニズム

頭部への衝撃が加わると、打撃を受けた場所の下に陽圧が、逆側には陰圧が発生します。この現象により、打撃側の損傷は「直撃損傷」（coup injury）と呼ばれ、逆側の損傷は「反衝損傷」（contrecoup injury）として分類されます。また、脳は複雑な構造をしているため、剪断損傷（shearing injury）が発生することもあります。さらに、脳幹と脳底動脈穿通枝のずれによって小出血が起こることもあります。こうした損傷の結果、脳の組織に挫滅や小出血、そして浮腫が生じ、これらがまとめて脳挫傷と呼ばれます。

主な原因

脳挫傷の主な要因は、頭部への強い打撃です。これにはスポーツや交通事故、転倒などが含まれます。どのような原因であれ、重度の外部の力が頭部に加わることで脳が損傷を受けるリスクが高まります。

症状

脳挫傷が発生する場合、しばしば頭蓋骨骨折や頭蓋底骨折を併発することがあります。また、脳内出血が起こるケースも多く、これらが影響してさまざまな症状が現れることになります。具体的な症状としては、嘔吐、意識障害、運動知覚麻痺、痙攣発作、さらに視野の欠損などが挙げられます。また、重度の場合には昏睡状態に陥ることもあります。

治療と予後

脳挫傷の治療には、損傷の範囲が広いことが多く、神経細胞の再生能力が非常に低いため、手術が基本的には適さないことが特徴です。そのため、保存的な治療方法が選ばれます。ただし、脳内出血や損傷がひどい場合には、手術が必要になることもあります。

治癒後には、運動機能障害や失語、視力障害、また精神的な問題などの後遺症が残ることも少なくありません。小さな脳挫傷の場合、予後は比較的良好ですが、広範囲の損傷や脳内に大きな血腫がある場合には、予後が悪くなる傾向があります。特に、脳内血腫を伴う重症の脳挫傷では、致命的な可能性が高く、社会復帰が困難な場合があります。実際、昏睡状態にある重症の脳挫傷患者の致命率は44%、社会復帰は31%程度とされています。

まとめ

脳挫傷は、頭部への損傷によって引き起こされる深刻な状態であり、その原因や症状、治療法について理解を深めることが重要です。早期の診断と適切な治療が、予後を改善するためのカギとなります。

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