膃肭獣保護条約

膃肭獣保護条約について

概要

膃肭獣保護条約は、1911年に日本を含む四カ国（ロシア帝国、日本、アメリカ合衆国、カナダ）によって締結された、オットセイとラッコの保護を目的とした国際的な条約です。この条約は、動物保護に関する初期の重要な取り組みの一つであり、乱獲からこれらの種を守るための画期的な措置の一環でした。

背景

18世紀末、探検家ヴィトゥス・ベーリングのアラスカ探検に同行した博物学者ゲオルグ・ヴィルヘルム・シュテラーは、ラッコの毛皮を欧州に持ち帰り、その美しさを紹介しました。これをきっかけに、ラッコの毛皮は高く評価され、1872年以降、千島列島周辺では捕獲者たちによる乱獲が始まりました。日本でも1873年以降、ラッコの猟が行われ、その毛皮が流行したことにより、ラッコの生息数は急速に減少しました。

このような背景から、19世紀半ばには20万から30万頭と推定されていたラッコの数が、あっという間に絶滅の危機に瀕することとなります。密猟者H.J.スノーは、1885年には70-80頭しか捕獲できない状況に直面しました。また、同じく乱獲の影響を受けたオットセイも、毛皮の需要と漢方薬の材料として利用されたため、その個体数は激減しました。この事態を受けて、各国は国際的な保護の必要性を認識し、条約締結へと至ったのです。

条約の内容

膃肭獣保護条約は、主にオットセイとラッコに関する捕獲の制限や保護を目的としており、各国が協力してこれらの動物を守るための枠組みを作り上げていました。なお、条約は15年の時限条約として設けられており、その期間が過ぎると一年前の通知で破棄することが可能とされていました。日本は条約の改定を希望していましたが、アメリカ合衆国の反対により協議は実現しませんでした。

失効とその後

第二次世界大戦直前の1940年、日本は条約の破棄と新しい協定の骨子を通告しましたが、その後、新協定の締結を見ずに1941年に条約は失効しました。しかし、オットセイやラッコの保護については、各国の国内法や二国間の合意に基づいて引き続き行われました。1957年には、北太平洋におけるオットセイの保存を目的とした暫定条約が旧加盟国により締結され、今後の持続的な生産と保護の取り組みが進められました。

やがて、1984年にはこの暫定条約も歴史的な背景を経て失効しましたが、その後の国際的な取り組みにより、海棲哺乳類を含む生態系の保護が積極的に推進されるようになりました。

参考文献

関連する法律や事件としては、「ラッコ・オットセイ猟法」（1895年）や「臘虎膃肭獣猟獲取締法」（1912年）などがあります。これらの情報は、膃肭獣保護条約に関連した重要な側面を理解するのに役立ちます。

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