膜輸送体

膜輸送体の概要

膜輸送体（まくゆそうたい；英: Membrane transport protein）は、生体膜を貫通して物質を輸送する蛋白質を指します。一般には、単に「輸送体」や「輸送担体」とも呼ばれます。

輸送のメカニズム

生体膜を通じて物質が移動する際、親油性の低分子化合物は、高濃度から低濃度の側へ自発的に移動します。しかし、親油性の低い物質は自発的に移動することができず、低濃度側から高濃度側に移動するにはエネルギーの供給が必要です。このようなエネルギーを利用した非自発的輸送を行うのが膜輸送体です。膜輸送体は主に、促進拡散（受動輸送）と能動輸送の2つに分類されます。

促進拡散

促進拡散はエネルギーを必要とせず、主にチャネルによって行われます。チャネルは膜を貫通する蛋白質で、ポア（穴）を有し、選択的にイオンや低分子化合物を通過させます。代表的なチャネルには、イオンチャネルやアクアポリン（水チャネル）があります。

イオンチャネルは、特定の刺激に応じてゲートが開く構造を持ち、リガンド結合性や電位依存性のものなど、いくつかのタイプに分類されます。これによって神経、感覚受容器、筋肉において重要な役割を果たします。

能動輸送体

一方、能動輸送体はエネルギーを必要とし、さらに一次性能動輸送体と二次性能動輸送体に分かれます。一次性能動輸送体は化学エネルギーや光エネルギーを利用して物質を輸送し、主にATPのエネルギーを使います。これに対し、二次性能動輸送体は膜を挟む電気化学的ポテンシャル違いをエネルギー源とします。

一次性能動輸送体

代表的な例として、ATPアーゼを利用するイオン輸送体やABC輸送体があります。イオンポンプは特殊で、F型、A型、V型、P型に分かれ、特にF型はATP合成にも関与します。

二次性能動輸送体

二次性能動輸送体には、キャリアとして知られる輸送体があり、濃度勾配とイオンによる電位差をエネルギー源として利用します。これにより、対向輸送体、共輸送体、単輸送体に分類されます。

輸送体の役割

膜輸送体は、生体内で必要な物質の流通を担う重要な成分です。細胞内への物質の取り込みや、老廃物の排出など、多様な生理的過程に関与しており、特に細胞の恒常性を維持する上で欠かせない存在です。これらの輸送体の機能の理解は、医学、薬学などの分野での新しい治療法の開発にもつながります。

関連項目

• - イオノフォア
• - イオンチャネル
• - アクアポリン
• - 能動輸送

膜輸送体は、このように細胞の機能を支える重要な部分であり、生命の基本的なメカニズムを理解するための鍵となります。

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