膳所焼

膳所焼（ぜぜやき）

膳所焼は滋賀県大津市で生産される陶器で、特に茶陶としての評価が高いものです。この焼き物は遠州七窯の一つに数えられ、その特徴として黒みを帯びた鉄釉があります。素朴でありながらも繊細な意匠が施され、遠州が提唱した「きれいさび」の精神が色濃く反映されています。

歴史

膳所焼の起源は1621年に遡ります。膳所藩主となった菅沼定芳が、御用窯として膳所焼を始めたことがその始まりです。当初は「御庭焼」とも呼ばれ、膳所藩領内で陶器の製造が行われていました。さらに、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて作られた大江焼、勢多焼、国分焼の三古窯と、再興を目指した梅林焼、雀ケ谷焼、瀬田焼と合わせて「膳所焼」と称されています。

菅沼定芳は1629年に相模川の近くに御用窯を築き、著名な茶人たち、すなわち本阿弥光悦、小堀遠州、松花堂昭乗と交流を持つことで、茶器の制作に大きな影響を受けました。菅沼が移封された後、1634年には石川忠総が新たに膳所藩主となりました。石川忠総の父、大久保忠隣は古田織部の弟子であり、そのため石川も小堀遠州から指導を受けて茶器の製作に力を注ぎました。

膳所焼はこの時期に評価を高め、茶入や水指は多くの大名に贈答品として重宝されました。しかし、石川忠総が1651年に死去し、後継の石川憲之が伊勢亀山藩に移封されると、膳所焼は次第に衰退していきました。

膳所焼再興

膳所焼の復活には、いくつかの窯の試みがあります。例えば1781年から1789年にかけて、小田原屋伊兵衛によって興された梅林焼では、黒みのある鉄釉とは異なり、唐三彩風の鮮やかな発色が特徴でした。

また、1818年から1830年にかけて、当地の商人である井上幾右衛門が雀ケ谷焼を興し、京から陶工を招き入れて窯を築きました。主に土瓶、皿、鉢、徳利などの実用的な陶器が生産されました。

さらに、江戸時代末期から明治時代初期にかけては、池田門平という陶工が瀬田焼を始め、楽焼風の茶碗を製造しました。三代続くも、大正時代には窯が廃止されてしまいましたが、多数の製品が今でも残されています。

膳所焼の復興に尽力したのは地元の岩崎健三で、1919年に築いた窯が膳所焼を再生させることで新たなスタートを切りました。彼は京都の陶工二代伊東陶山の技術指導を受け、膳所焼の復興に焦点を当てました。岩崎の死後、息子の岩崎新定がその思いを受け継ぎ、現在の膳所焼へとつながっていきます。膳所焼の作品は膳所焼美術館で見ることができ、訪れる人々にその魅力を伝えています。

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