膳部菩岐々美郎女

膳部菩岐々美郎女（かしわで の ほききみのいらつめ）

膳部菩岐々美郎女は、飛鳥時代に生きた女性で、聖徳太子の妃として歴史に名を残しています。彼女は、推古天皇30年（622年）に聖徳太子に先立つこと一日前に亡くなりました。

出自

膳部菩岐々美郎女は、6世紀から7世紀にかけて朝廷の食膳を司る伴造として勢力を誇った豪族・膳氏の出身です。父は膳臣傾子（かしわでのおみかたぶこ）で、妹には聖徳太子の弟である久米王の夫人となった膳比里古郎女がいます。このことからも、彼女の一族が当時の朝廷において重要な地位を占めていたことがうかがえます。

生涯

推古天皇6年（598年）に聖徳太子の妃となった膳部菩岐々美郎女は、四男四女をもうけました。その中には、異母兄である山背大兄王の妃となった舂米女王（つきしねのひめみこ）もいます。聖徳太子は彼女を深く信頼し、「死後は共に埋葬されよう」と語ったと伝えられています。この言葉は、太子が彼女に寄せていた深い愛情と信頼を示すものとして、後世に語り継がれています。

推古天皇30年（622年）2月21日、聖徳太子と共に病に倒れ、太子の死の前日に息を引き取りました。彼女の死後、聖徳太子の墓所である磯長陵（しながりょう）に合葬されました。夫婦としてだけでなく、政治的にも精神的にも深い繋がりを持っていた二人の関係は、その墓においても永遠に結ばれることとなりました。

膳部菩岐々美郎女は、聖徳太子の妃として、また一人の女性として、激動の時代を生きました。彼女の生涯は、当時の社会情勢や豪族間の関係、そして聖徳太子の人物像を理解する上で重要な手がかりとなります。

彼女に関する資料は多くはありませんが、わずかに残された記録から、彼女が聖徳太子にとってかけがえのない存在であったことが伝わってきます。彼女の存在は、聖徳太子の人間味あふれる一面を照らし出すとともに、飛鳥時代の皇室と豪族の関係を考察する上で貴重な視点を提供してくれます。

参考文献
坂本太郎・平野邦雄監修『日本古代氏族人名辞典』吉川弘文館、1990年、ISBN 4642022430
竹内理三他編『日本古代人名辭典』第二巻、吉川弘文館、1959年、ISBN 4642020020

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