舂米女王

舂米女王（つきしねのひめみこ）

舂米女王（つきしねのひめみこ）は、生年不詳ながら7世紀前半に生きた皇族女性です。『上宮聖徳法王帝説』によれば、聖徳太子（厩戸皇子）と膳傾子の娘・膳部菩岐々美郎女の間に生まれたとされ、『日本書紀』では上宮大娘姫王（かみつみやのいらつめのみこ）と記されています。

生涯

『上宮聖徳法王帝説』では、聖徳太子が膳部加多夫古臣の娘である菩岐々美郎女を娶って生まれた最初の子として紹介されています。また、異母兄である山代大兄王の妃となり、7人の子をもうけたとされています。

蘇我氏との関係

皇極天皇元年（642年）には、蘇我蝦夷が自らの祖廟を葛城の高倉に建て、天子の行事を行うという出来事がありました。さらに、百八十の部曲を使い、双墓を今来に築き、それぞれを大陵、小陵と称して、蝦夷・入鹿親子の墓としました。この際、聖徳太子の一族である上宮家の乳部（壬生部）の民が墓の工事に動員されました。

『日本書紀』には、この時、舂米女王が「上宮大娘姫王」として、上宮家の乳部の役使に関して発言した唯一の記録が残っています。

斑鳩宮の悲劇

皇極天皇2年（643年）、蘇我入鹿は巨勢徳多、土師猪手らを派遣し、斑鳩宮の山背大兄王を襲撃させました。山背大兄王は一族や家臣とともに斑鳩宮から脱出し、生駒山へ逃れましたが、最終的には斑鳩寺で自害しました。舂米女王もこの時、山背大兄王とともに自経したと考えられています。『上宮聖徳法王帝説』や『上宮聖徳太子伝補闕記』にも、この事件で舂米女王が犠牲になったことが記されています。

考察

『日本書紀』における舂米女王の「上宮大娘姫王」という呼称は、彼女が山背大兄王の妻としてだけでなく、上宮乳部の役使に対して一定の発言権を有していたことを示唆しています。研究者の間では、山背大兄王が舂米女王と婚姻関係を結ぶことで、彼女が所有していた乳部に対する権限を補完したのではないか、という説も唱えられています。また、聖徳太子が晩年に膳妃らとともに飽波葦宮に居住していたことから、「上宮乳部」の奉仕先がそちらへ変更され、膳妃の没後は娘である舂米女王がその管理権を保有するようになったという見方もあります。

参考文献

『日本書紀』（四）、岩波文庫、1995年
『日本書紀』全現代語訳（下）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
『日本の名著2　聖徳太子』責任編集：中村元、中央公論社、1970年
『別冊歴史読本　古代人物総覧』、新人物往来社、1996年

関連項目

壬生部
舂米部

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