膿胸

膿胸：胸腔に膿が溜まる重篤な疾患

膿胸とは、胸腔（胸部臓器を包む空間）内に膿（うみ）が溜まる病気です。正式名称はパイオラックス（pyothorax）またはエンピエーマ（empyema）と呼ばれ、細菌感染や外傷などによって引き起こされます。全身に影響を及ぼす重篤な疾患であるため、早期発見と適切な治療が不可欠です。

膿胸の原因

膿胸は、様々な原因で発生します。最も一般的な原因は、肺炎や肺膿瘍などの肺感染症です。感染により胸腔内に膿が蓄積すると、膿胸となります。

その他、膿胸の原因としては以下が挙げられます。

胸部の外傷:　肋骨骨折や肺損傷に伴い、胸腔内に細菌が侵入し、感染を起こすことがあります。
手術後の合併症:　胸部手術後、感染が起きることで膿胸が発生する可能性があります。
食道穿孔:　食道の壁に穴があき、内容物が胸腔内に漏出することで感染が起こる場合があります。
気管支漏:　気管支に穴があき、空気が胸腔内に漏れることで、感染症のリスクが高まります。
リンパ管系の疾患:　リンパ管の炎症などが原因で、膿が胸腔に溜まる場合があります。

膿胸の症状

膿胸の症状は、疾患の進行度や原因によって異なりますが、一般的な症状としては以下のようなものがあります。

発熱:　高熱を伴うことが多く、全身状態の悪化を示します。
倦怠感・元気消失:　全身の疲労感や、活動性の低下が顕著になります。
胸痛:　胸部に痛みを感じることが多く、呼吸によって痛みが悪化することがあります。
咳:　膿胸は肺感染症を伴うことが多いため、咳を伴う場合があります。
呼吸困難:　胸腔に膿が溜まることで肺の拡張が妨げられ、呼吸困難を引き起こします。
* 呼吸音の変化:　聴診器で胸部を聴診すると、呼吸音の変化が確認できる場合があります。

これらの症状が現れた場合は、速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。

膿胸の診断

獣医師は、問診、身体検査、画像検査などを用いて膿胸の診断を行います。レントゲン検査や超音波検査で胸腔内の膿の蓄積を確認し、また血液検査で感染の有無や全身状態を評価します。必要に応じて、胸腔穿刺を行い、膿液を採取して細菌培養検査を行います。これにより、原因菌を特定し、適切な治療を行うことができます。

膿胸の治療

膿胸の治療は、原因菌に対する適切な抗菌薬の投与が中心となります。さらに、胸腔内に溜まった膿を除去するために、穿胸術（胸部に小さな穴を開けて膿を排出する手術）や胸腔洗浄（胸腔内に溜まった膿や細菌を洗浄する処置）を行います。重症例では、胸腔ドレーン留置による持続的な排液が必要となる場合があります。

また、症状に応じて対症療法も行われます。例えば、発熱に対して解熱剤を投与したり、呼吸困難に対して酸素療法を行うことがあります。

予後

膿胸の予後は、疾患の重症度、原因菌、治療の開始時期などによって異なります。早期に適切な治療を開始できれば、良好な予後が期待できます。しかし、治療が遅れると、敗血症などの合併症を引き起こす可能性があり、予後が悪化することがあります。

まとめ

膿胸は、早期発見と適切な治療が重要な重篤な疾患です。胸痛や発熱などの症状が現れた場合は、速やかに獣医師の診察を受けてください。獣医師による適切な診断と治療によって、多くの場合、完治が可能です。

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