臘

臘（ろう・﨟）について

臘は、仏教において特に僧侶が「比丘」として受ける具足戒からの年数を示す重要な単位です。この概念は、一般的には夏臘（げろう）や法臘（ほうろう）、戒臘（かいろう）、法歳（ほうさい）などと呼ばれる事もあります。

臘の由来

臘という言葉は、古代中国における冬至後の第三の戌の日に行われる祭り、すなわち臘祭に由来します。この祭りでは、狩りで得た獲物を先祖や神々に供える行事が行われていました。臘祭は人々にとって重要な文化的儀式であり、祖先を称える意味も含まれています。

夏安居の締めくくり

仏教の僧侶の生活においては、1年を90日間にわたる夏安居（げあんご）の期間があり、その終了日である7月15日をもって、その年の臘を数えるようになりました。そのため、夏安居を終えた回数を臘と呼び、臘の数が僧侶間の長幼の秩序を定める重要な要素となっていました。このように臘が僧侶の社会的地位に影響を与えることになります。

具足戒と臘の関係

具足戒は通常、20歳以上の者に与えられる宗教的な戒律ですが、日本の天台宗では、その年齢に関わらず20歳未満でも戒を受けることが可能な戒壇での円戒を受けた年数も臘として数えられることがあります。そのため、実際の年齢と臘の年数に20年以上の差が生じる場合もあったのです。このような習慣は、宗教的な背景や文化的な要因によって生まれました。

極臘の概念

特に、最上位の臘を持つ僧侶は「極臘（ごくろう）」とも呼ばれ、他の僧侶から崇敬の念を受けることがありました。これは、臘の数が多いほど、その僧侶の宗教的な経験や知識、権威が高いと見なされる、という信念から来ています。

仏教における臘の重要性

臘は単なる年数を示すだけではなく、僧侶の地位や秩序、またその宗教的活動の経験を象徴する重要な指標です。しばしば、地域や宗派によってその解釈や運用は異なるため、臘の概念は仏教の多様性を示す一例となっています。

参考文献

• - 石田瑞麿「臘」『国史大辞典 14』（吉川弘文館 1993年） ISBN 978-4-642-00514-2
• - 橋本義彦「﨟」1『日本史大事典 6』（平凡社 1994年） ISBN 978-4-582-13106-2
• - 田中文英「﨟」『日本歴史大事典 3』（小学館 2001年） ISBN 978-4-095-23003-0

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