自判

自判（じはん）について

自判とは、上訴を受けた裁判所が既存の原審判決を不当と判断し、取り消しまたは破棄した後に、再度判決を下す法的な手続きのことです。このプロセスでは、従来の判決を一切差し戻すことなく、裁判所の新たな判断を下します。自判には主に取消自判と破棄自判という2つの形式があります。

取消自判

取消自判は、民事訴訟において、控訴審判決が第一審の判決を取り消し、新たに判決を下すことを指します。民事訴訟は第一審と第二審ともに事実審であるため、通常はこの形式が選ばれます。民事訴訟法第305条では、第一審判決が不当とされる場合にはその判決を取り消す必要があり、判決の手続きに違法があった場合にも同様に取り消されます（第306条）。

取り消しが行われた場合、その裁判所の判断は消失するため、新たに判決を下す自判が必要となります。ただし、事件のさらなる審理が求められる場合には、第一審に差し戻すことが可能です（第308条1項）。一方、第一審判決が訴え却下の場合には、原則として差し戻しが求められますが、追加の弁論が不要な場合には自判も可能です。

破棄自判

破棄自判は、主に民事訴訟の上告審や刑事訴訟の控訴審、上告審で、原審の判決を破棄し、新たに判決を下す手続きです。民事訴訟法第326条および刑事訴訟法第400条で定義されています。民事訴訟では、上告審は法律に基づく審査であるため、一般的には破棄差戻しが行われることが基本とされています（第325条1項）。

破棄自判が求められるのは次のケースです：
1. 原審の確定した事実が適法でありながら、法令解釈に誤りがある場合（第326条第1項）
2. 裁判権の欠如を理由に判決を破棄し、訴えを却下する場合（同2項）

刑事訴訟においても、特定の破棄事由に該当する場合は、原判決を破棄するのが義務付けられています（第397条第1項）。また、その際にすぐに判決を下すことができる場合は自判が可能です。

具体例

自判の具体例としては、尊属殺重罰規定違憲判決や日建土木事件などが挙げられます。これらの事件では、上訴審で特定の判断を下し、結果として刑罰の軽減や無罪判決が導かれたケースが見受けられます。

最近では、新潟少女監禁事件や北海道孫誘拐事件、長銀事件などが注目されています。これらの判決も自判の重要な事例として、多くの法律実務家の関心を集めています。

注意点

刑事訴訟法においては「自判」という用語は用いられていない点にも留意が必要です。民事訴訟法第326条では「破棄自判」と記載されていますが、実際の法文には「自判」という言葉は登場しません。これは、法的な文脈における専門用語の使い方に関する重要な理解を示しています。

参考文献

• - 『法律学小辞典 第3版』（有斐閣、1999年）

このように、自判の概念は法的手続きの中で重要な役割を果たし、裁判所が行う判断の公平性と正義を保つための基盤となっています。

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