自宅警備員

自宅警備員とは

自宅警備員（じたくけいびいん）とは、社会との関わりをほとんど持たず、自宅に留まり続ける人を指す日本のインターネットスラングです。引きこもりやニートの状態を、自虐的なユーモアを込めて表現した言葉として用いられます。

発祥

自宅警備員という言葉がいつ、どこで生まれたのかは明確には分かっていません。しかし、2000年代後半にはインターネット掲示板を中心に広まっていたと考えられています。2007年には「ネット流行語大賞」で7位にランクインしており、当時から一定の認知度があったことが伺えます。

この言葉は、定職に就かず自宅にいる状態を、「自宅の警備」という社会に役立つ活動に見立てたものです。これは、社会とのつながりを持ちにくい状況にある人々が、自らをユーモラスに表現することで、心のバランスを取ろうとした表れとも解釈できます。

作家の堀田純司氏は、インターネットの発達により、これまで繋がることのなかった人々がネットを通じて繋がり、自虐的なユーモアを伴った「自称」が生まれたと指摘しています。

多様な自称

自宅警備員の中には、以下のような様々な自称を用いる人もいます。

ホームガーディアン
一級在宅士
代表戸締役社長
職務放棄員
閉鎖空間の神人
内交官

これらの自称は、自宅にいる状態を面白おかしく表現することで、自身の状況を客観視し、ユーモアに変えようとする試みと言えるでしょう。

また、実際に病気や引きこもりといった問題を抱えているわけではなく、単に「自宅で誰とも関わらずに過ごした」という意味合いで使われることもあります。

自宅警備員の「任務」

自宅警備員の「任務」は、自宅の警備だけではありません。インターネットの検閲や維持、コンビニまでの道のりのパトロールなども含まれることがあります。勤務時間は不規則で、日勤よりも夜勤を選ぶ人が多いようです。また、その過酷な勤務内容にもかかわらず、賃金は非常に低いとされています。

これらの「任務」は、あくまで比喩的な表現であり、自宅にいる状態を面白おかしく語るためのものです。

使用例

実業家の平松庚三氏は、ライブドアホールディングス代表取締役社長を退任後、「自宅警備員に転職した」と発言し、話題となりました。この発言は、自身の状況をユーモラスに表現したものであり、多くの人々に共感をもって受け止められました。

また、一般のニュースメディアにおいても、「引きこもり」を「自宅警備員」と比喩する表現が用いられることがあります。これは、社会問題としての引きこもりを、より身近に感じさせるための工夫と言えるでしょう。

自宅警備隊 N.E.E.T.

自宅警備を行う人々が集まっているという名目のサークル「自宅警備隊 N.E.E.T.」も存在します。彼らは、SWATを意識したコスプレでイベントに参加するなど、ユニークな活動を行っています。

海外の事例

「自宅警備員」という言葉が日本で用いられる以前に、海外で治安の悪い地域の一般住宅を警備するために雇用された人物を「自宅警備員」と呼んで報道した例があります。これは、日本のインターネットスラングとしての「自宅警備員」とは意味合いが異なります。

関連項目

警備員
石岡良治

「自宅警備員」という言葉は、単なるネットスラングとしてだけでなく、現代社会における人々の孤独や繋がりへの希求を反映した言葉として、今後も様々な形で使用されていくことでしょう。

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