自己愛的防衛

自己愛的防衛について

自己愛的防衛（じこあいてきぼうえい、Narcissistic defences）とは、自分自身の理想的な側面を保護し、その限界を認めずに無視する心理的プロセスを指します。このような防衛機制は、自己中心的な考え方を促成し、他者や状況に対して硬直した見方を持つ傾向があります。自己愛的防衛を持つ人々は、意識的でも無意識的でも、度々罪悪感や恥を感じながら日常を過ごすことになります。

自己愛的防衛の成り立ち

自己愛的防衛は非常に初期の段階から発生し、主に否認、歪曲、投影といった手法を用います。このような防衛機制は、ナルシシズムが関与する場合が多く、人や状況を善悪や、白黒といった二極的な観点でしかとらえられない「スプリッティング」と呼ばれる現象も、別の防衛機制として存在します。ナルシストの特性として、自身を過度に評価することが挙げられますが、これは一生のどの段階でも形成される可能性があります。

一連の防衛機制

ナルシストは、自らの痛みを伴う感情から逃れるために、一連の防衛機制を行います。主なものには以下が含まれます。
1. 無意識的抑圧 - 自らの感情を意識から排除します。
2. 意識的否認 - 明示的に現実を否定しようとします。
3. 歪曲 - 事実を誇張したり最小化したりすることによって、自らを守ります。
4. 投影 - 自身の感情や欠点を他者に押し付け、非難します。
5. 共依存的な関係の構築 - 自らの歪んだ思想を支持する友人関係に依存します。

精神分析家の見解

心理分析の創始者フロイトは、自己愛的防衛という概念には深く言及していませんが、彼の著書『ナルシシズム論』にはその一端が表われています。フロイトは、この種の自己愛的防衛を自己外対象に対する愛の喪失に対する防御的な反応とみなしました。

メラニー・クラインはナルシズムにおいて投影的同一視を重視し、外的対象が傷つくことに対する無自覚な防衛を強調しました。彼女の理論では、ナルシシズムにおける防衛機制が感情の支配や軽蔑によるものであることが示されています。

ハーバート・ロゼンフェルドは、自己愛的防衛の一環として自我と対象の分離を意識する防衛手段を観察しました。この過程では、投影的同一視が重要な役割を果たします。

特にオットー・カーンバーグやハインツ・コフートなどのアメリカの精神分析家は、否認や投影性同一視、過剰な理想化などのメカニズムの分析を行い、自己愛的防衛について深く掘り下げています。カーンバーグは自己愛的防衛の肯定的側面に注目し、コフートは、成熟過程において自己愛的態度が必要であることを強調しました。

このように、自己愛的防衛は多面的な側面を持っており、様々な心理的メカニズムが関与しています。自己愛的防衛の理解は、自己を見つめ直す手助けとなり、健康的な人間関係を築くために重要な鍵となるでしょう。

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