自性清浄

自性清浄について

自性清浄（じしょうしょうじょう）とは、心の本質がすでに清浄であるという考え方で、外的な要因によって一時的に汚れてしまっている状態を示します。これは、仏教における重要な理念であり、時には心性本浄や心性本浄説とも表現されます。この考え方は、心が生まれつき清浄であるという前提に立ちつつ、現実には何らかの原因で汚れが生じていることを認識します。

概要

パーリ文献の中には、「比丘たちよ、この心は光り輝いている。ただ、外来のもろもろの煩悩によって汚れている」という記述があります。ここで「光り輝く」という表現は、心が本来持っている純粋さや清らかさを象徴しています。心は白紙のような状態であるべきですが、現実には外的な雑念や煩悩が影響を及ぼし、結果としてその本質が見えにくくなるのです。このような状態から、悟りを得ることで煩悩を取り除き、本来の清浄性を回復した状態が「離垢清浄」として表現されます。これは、心がけがれを離れて清浄な状態に戻ることを指します。

唯識説との関連

唯識思想においては、心が離垢することが重視されます。「自性清浄」だけでなく、「離垢清浄」という概念も併せて考えられます。さらに、「所縁清浄」（仏の教えの清浄性）や「道清浄」（修行の無漏性）も加えた「四種清浄」という枠組みが存在します。この場合の自性清浄は、真如や法界を象徴するものとして解釈されることが多いです。

諸部派の立場

心の自性に対する見解は、仏教の諸部派間で意見が分かれています。説一切有部や上座部大寺派などの一部は自性清浄の考えを否定しますが、大乗仏教の多くはこの理念を積極的に受け入れています。ただし、『般若経』の解釈では、清浄を「空」という概念に結びつけて理解し、仏教の教えが縁起や無自性を示しているとされています。

如来蔵系の理論

一方、如来蔵系の理論では、自性清浄心を「如来蔵」や「仏性」という概念で極めて重要視します。これは、如来の法身と同質の無為な状態を指し、絶対的な存在として扱われます。また、『大乗起信論』ではこの自性清浄心を「本覚」と表現し、その位置付けは特別な意味合いを持つとされています。

結論

自性清浄は、心の本質が本来清浄であることを理解し、外的な要因によって生じる汚れを克服する考え方に基づいています。これを通じて、人は自己の内面を見つめ直し、悟りの道を歩むことができるのです。心の浄化を目指すことは、仏教修行において非常に重要なテーマであり、心の本質に迫るための有効な方法となります。

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