自治教会 (ルーテル教会)

自治教会

自治教会（じちきょうかい）は、キリスト教の教会組織において、特定の地位や種別を示す用語です。英語では「self-governing Church」と呼ばれ、文字通り自らを治める、すなわち独立した運営を行う教会を指します。この概念は、主にルーテル教会や正教会などの一部の教派で用いられています。本稿では、特にルーテル教会における自治教会について掘り下げて解説します。

ルーテル教会における自治教会

ルーテル教会における自治教会は、外部の教会組織（例えば、かつて宣教活動を支援していた母教会など）から独立し、自身の判断と責任において教会運営、財政管理、人事、そして最も重要な宣教活動を行う権限を持つ教会を指します。これは単に名称上の独立ではなく、実質的な自立を伴うものです。

自治教会となることは、その教会の信徒たちが主体的に教会のあり方を決定し、その地域や社会の文脈に即した宣教を展開していくことを可能にします。重要な意思決定（例えば、教憲や教規の制定・改定、指導者である牧師や役員の選出、教会の予算編成など）は、外部からの指示や承認に依存せず、教会内部の機関（多くの場合、総会やそれに準ずる会議体）の議決に基づいて行われます。

また、財政的な自立、すなわち「自給」も自治教会の大切な要素の一つです。これは、外部からの継続的な財政援助に頼ることなく、主に所属する信徒からの献金などによって、教会の維持、宣教活動、牧師の給与、社会奉仕活動などに必要な経費を賄えるようになることを意味します。財政的な自立は、教会が独自のビジョンに基づいて活動を展開するための基盤となります。

日本ルーテル教団の歩み

日本におけるルーテル教会の歴史においても、自治教会化は重要な出来事でした。日本ルーテル教団は、その設立以来、主に北米のルーテル教会からの宣教師や財政的な支援を受けて成長してきましたが、時を経て日本自身の教会としての自立を目指すことになります。

1968年、日本ルーテル教団は会衆主義制度を採用するとともに、アメリカ合衆国ルーテル教会から独立した「自治教会」としての歩みを始めました。会衆主義制度とは、個々の教会（会衆）の主体性を重んじ、その集合体である教団が運営される制度です。この制度への移行と自治教会化は、日本ルーテル教団が外部からの決定に依存することなく、日本の土壌における宣教のあり方や教会の運営方針を自ら定め、実行していくための大きな一歩となりました。

独立後、財政的な自立も重要な課題として取り組まれました。そして、1976年には自給を達成しました。これは、教団および傘下の教会が、外部からの支援がなくても自身の力で運営を継続できるようになったことを意味し、真の自治教会としての地位を確立したことを象徴する出来事でした。自給の達成は、単に経済的な側面だけでなく、宣教に対する責任感や主体性を高める上でも大きな意義を持ちました。

このように、日本ルーテル教団の例は、ルーテル教会における自治教会が、組織の独立、財政的自立、そして会衆の主体的な関与によって成り立ち、自己責任のもとで宣教を使命として推進していく姿を示しています。自治教会となることは、その教派が特定の地域で根差し、その文化や社会の中でキリストの福音を証ししていくための重要なプロセスと言えるでしょう。

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