自治紛争処理委員

自治紛争処理委員とは

自治紛争処理委員は、地方公共団体における紛争を解決するために設置される、地方自治法に基づいた附属機関です。地方公共団体同士の対立や争いを、第三者の立場から公平かつ迅速に解決することを目的としています。

設置根拠と委員の構成

自治紛争処理委員は、地方自治法第251条の規定に基づいて設置されます。委員は、紛争が発生するごとに、総務大臣または都道府県知事によって任命される3名の有識者で構成されます。委員は、紛争の内容に応じた専門的な知識や経験を持つ者が選ばれ、公平な判断を下すことが求められます。委員は非常勤で、紛争解決の必要に応じて活動します。

自治紛争処理委員の役割

自治紛争処理委員は、主に以下の2つの役割を担います。

1. 調停: 地方公共団体間の紛争について、当事者からの申請または職権により、自治紛争処理委員が調停を行います。調停では、当事者双方の主張を聴取し、合意形成に向けて助言や調整を行います。都道府県または都道府県の機関が当事者の場合は総務大臣が、その他の場合は都道府県知事が委員を任命します。

2. 審査と勧告: 市町村長などの市町村の執行機関が、都道府県の関与による処分（是正要求や許可拒否など）に不服がある場合、総務大臣に対して自治紛争処理委員による審査を求めることができます。審査の結果、必要に応じて都道府県に対して是正勧告を行うことがあります。

過去の事例

自治紛争処理委員が関与した過去の主な事例としては、以下のようなものがあります。

我孫子市 - 千葉県 (2010年、2011年)：我孫子市の農業振興地域整備計画の変更について、千葉県知事が不同意としたことに対し、我孫子市が審査を申し立てた事例です。2度にわたり同様の紛争が発生しています。
近江八幡市 - 滋賀県 (2021年)：ふるさと納税の返礼品として滋賀県が県内全市町に近江牛の取り扱いを認めたことに対し、主要産地である近江八幡市が審査を申し立てた事例です。
佐賀県 - 長崎県 (2010年)：唐津湾沖での砂利採取計画の認可境界を巡り、佐賀県知事が調停を申請した事例です。隣接する県同士の境界に関する紛争であることがわかります。

まとめ

自治紛争処理委員は、地方自治における重要な役割を担っています。地方公共団体間の紛争を公正に解決し、円滑な地方自治運営を促進することで、地域住民の利益に貢献しています。紛争解決の専門家である自治紛争処理委員の存在は、地方自治の安定と発展に不可欠な要素と言えるでしょう。

参考資料

総務省｜自治紛争処理委員
* 『自治紛争処理委員』 - コトバンク

もう一度検索