自由の村

自由の村（じゆうのむら）について

自由の村、正式名称は台城洞（テソンドン）は、韓国・京畿道の坡州市に位置する特異な村です。この村は、南北の分断の象徴ともいえる板門店に非常に近い場所にあり、軍事境界線からわずか500メートルの距離にあります。自国の軍事的な事情から、自由の村は南側のDMZ（非武装中立地帯）にある唯一の民間人が住む村であり、その特殊な状況から多くの制約を受けています。

立地と居住の制約

DMZは原則として居住や立ち入りが禁止されている区域ですが、協定により南北両側には1つの村が存在できることになっており、ここ自由の村がその例です。この村では、休戦当時の住民の直系子孫のみが居住を許可されているため、住人は非常に限定されています。特に女性が村外の人と婚姻した場合、住居資格が失われるため、その暮らしは非常に保守的です。例外として、婿養子は受け入れられていますが、それでも村の居住者は年間8か月以上の居住が求められます。

自由の村の住人は主に農業に従事しており、米や豆、唐辛子などを栽培しています。ただし、生活環境は厳しく、毎日の世帯ごとの人員チェックや、夜間の外出禁止（0時から5時まで）が設けられています。また、農作業も事前に申告しなければならず、特に軍事境界線近くでの作業には軍の同行が必要です。このような制約の中で、農業活動を行うことは容易ではありません。その代わりに、村民は納税や徴兵を免除されるため、韓国の他の農家に比べて収入が高いとされています。

交通と外部とのつながり

自由の村へのアクセスは制限されており、住民や許可を受けた者、さらに指定されたツアーの参加者以外は入村できません。市街地から村に向かう路線バスはありますが、民統線の北側へは出入証を持つ者以外は乗車できないため、交通の便も限られています。

周囲の環境と競争

北朝鮮側には、同様の経緯で残された開城特別市の機井洞（平和の村）があります。見た目は活気があるとされるが、実際にはほとんど無人状態であるとも言われています。自由の村と機井洞の間では1980年代に国旗掲揚塔の高さ競争が繰り広げられ、台城洞は98.4メートルの塔を建設し、機井洞は160メートルの塔を持っています。これにより、村同士の独自の競争が存在していることが伺えます。

教育と地域の施設

村内には、台城洞初等学校が一つの教育施設として存在しています。ここでは、国連軍から派遣された兵士が英語を教え、村内の児童に教育を提供していますが、卒業後は必ず一度村を出て他の中学校・高等学校に進学する必要があります。2024年現在、ここに通う児童は29名ほどで、ほとんどの生徒は村外から通っています。

また、台城洞公民館も重要な地域の施設であり、食堂やロッテシネマとの提携による映画上映室が設けられています。このように、住民の生活は特異ですが、少しずつ文化的な活動も見られるようになっています。

自由の村は軍事境界線に位置し、引き裂かれた土地の中で、戦争の記憶を背負いつつ新たな生活を築こうとしている人々の暮らしの一端を見せています。

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