自由党 (オランダ)

オランダ自由党(PVV): 反体制右派ポピュリズム政党の軌跡

オランダの政党、自由党(Partij voor de Vrijheid, PVV)は、2006年、第二院議員であったヘルト・ウィルダースによって設立された政党です。反イスラム、反移民、反EUを掲げる同党は、オランダ政治において特異な存在感を示し続けており、2023年の総選挙で躍進、2024年には初の政権参加を果たしました。本稿では、PVVの歴史、政策、組織構造、支持基盤、そして国際的な繋がりまで、多角的に考察します。

設立と初期の活動

ウィルダースは、[自由民主国民党]所属議員として活動していましたが、トルコのEU加盟問題などを巡る意見の対立から2004年に離党。その後、一人会派「ウィルダースグループ」を経て、2006年にPVVを設立しました。党名は、かつて存在した自由党(PvdV)を彷彿とさせる名称であり、歴史的文脈も意識していると考えられます。

2006年の第二院選挙では9議席を獲得、第5党として議席を獲得しました。その後、2009年の欧州議会選挙では4議席（議席数見直しにより5議席に増加）を獲得し、第2党に躍進しました。

2010年代：躍進と政権への接近

2010年の第二院選挙では、「イスラム諸国からの移民受け入れ停止」「コーランの発禁」「スカーフ着用への課税」といった政策を掲げ、ムスリム移民への警戒感を抱く有権者の支持を集め、24議席を獲得、第3党に躍進しました。この選挙結果を受け、VVDとキリスト教民主アピール(CDA)による少数連立政権（第1次ルッテ内閣）が成立。PVVは閣外協力という形で政権に影響を与えました。

その後、2012年には予算協議の対立から閣外協力を離脱。2014年にはウィルダース氏の差別発言が問題となり、離党者が続出するなど、内部の混乱も経験しました。しかし、2017年には20議席に議席数を伸ばし、その勢力を維持しました。欧州議会においては、「国家と自由の欧州」会派を結成し、その後「アイデンティティと民主主義」会派に参加していました。

2020年代：政権参加へ

2021年の第二院選挙では17議席を獲得。2019年の欧州議会議員選挙では議席を獲得できませんでしたが、英国のEU離脱に伴う議席数見直しにより1議席を獲得しました。しかし、2022年には欧州議会議員が離党するなど、波乱もありました。

そして、2023年の第二院選挙で37議席を獲得、第1党に躍進。2024年7月には、保守系4党による連立政権に参加し、ついに政権入りを果たしました。このことは、オランダ政治における右派ポピュリズム勢力の台頭を象徴する出来事と言えます。

PVVの政策

PVVの政策は、反移民、反イスラム、反EUを主要な柱としています。具体的には、ヨーロッパ諸国以外からの移民受け入れ反対、EU離脱、ユーロからの脱退、トルコのNATO追放などを主張しています。また、二重国籍反対、犯罪者の民族出自記録義務化なども提唱しています。一方、親イスラエル外交、反ユダヤ主義の取り締まり強化などを主張するなど、複雑な政策スタンスをとっています。

党組織と支持基盤

PVVは、ウィルダース氏1人を党員とする、独特の「1人政党」構造を持っています。党員組織や地方組織は存在せず、ウィルダース氏が党の意思決定を掌握しています。情報発信は主にSNSを利用し、討論会やインタビューへの参加は限定的です。

支持基盤は、白人労働者階級、男性、18～25歳、中低所得者層に多いと分析されています。設立当初は、ピム・フォルタイン党(LPF)の支持者層や、政治に無関心だった層からの支持を得ていました。

国際的な繋がり

PVVは、国際自由同盟や自由のための欧州同盟などの国際組織にも参加しています。欧州議会においては、「アイデンティティと民主主義」会派に所属していました。

まとめ

オランダ自由党PVVは、その反体制的な姿勢、カリスマ的な党首、そして明確な政策によって、オランダ政治に大きな影響を与え続けています。2024年の政権参加は、右派ポピュリズムの台頭を象徴する出来事であり、今後のオランダ政治、ひいてはヨーロッパ政治の動向に大きな注目が集まります。今後、PVVが政権においてどのような政策を実行し、どのような影響を与えるのか、注視していく必要があります。

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