自由州 (ドイツ)

ドイツにおける自由州（Freistaat）とは

ドイツ語の「Freistaat」（自由州または自由国）は、19世紀以降に成立した非君主制の自由な国家体制、すなわち共和国を意味する言葉です。この言葉は、特にドイツの歴史と深く結びついており、その変遷を理解することは、ドイツの政治と文化を理解する上で重要です。

自由州の起源

中世には、帝国自由都市や自由ハンザ都市など、「自由」を名称に含む都市が存在しました。しかし、これらは貢納や軍役の免除、独自の管轄権など、皇帝や君主の主権からの自由を意味するものでした。一方、Freistaatは、「共和国」や「共和制」を意味する言葉として使われるようになりました。これは、共和政ローマのラテン語名「libera res publica」のドイツ語訳「freier Staat」に由来し、国家主権が国民から生じる国家、特に君主制とは対照的に国家元首が国民によって選出される政体を指します。

ヴァイマル共和政下の自由州

第一次世界大戦後、ドイツ帝国は崩壊し、ヴァイマル共和政が成立しました。この時期、君主制から共和制に移行したドイツのほとんどの州が「自由州」を称しました。ヴァイマル憲法第17条では、「すべての領邦は自由州憲法を定めなければならない」と規定され、プロイセン、ザクセン、ブラウンシュヴァイクなどが自由州となりました。

しかし、すべての州が自由州を称したわけではありません。ヴュルテンベルクやヘッセンは「人民州」（Volksstaat）、バーデンは「共和国」（Republik）を称しました。また、テューリンゲン地方は小邦が乱立していましたが、後に統合されテューリンゲン州となりました。

非公式の自由州

興味深い例として、ラインガウ地方のロルヒ周辺地域が、1919年から1923年までの間、「ボトルネック自由国」（Freistaat Flaschenhals）と呼ばれる半独立状態になったことがあります。この地域は、連合国による占領地域の狭間に位置し、他の地域から隔絶されていたため、自治を余儀なくされました。独自の通貨や切手を発行し、他国との外交関係も検討されましたが、ルール占領後に解消されました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、プロイセン自由州は解体され、他の自由州も再編されました。ドイツ民主共和国（東ドイツ）では、当初はザクセン州など5つの州を置いていましたが、後に州を解体して県とする中央集権化が進められました。1990年のドイツ再統一により、ほぼ解体前のザクセン州を復活させる形でザクセン自由州が新設され、1993年にはテューリンゲン州も自由州を名乗るようになりました。

現代の自由州

現代のドイツ連邦共和国では、すべての州が基本法の下で同格とされており、「自由州」という用語に法的意味はなくなっています。バイエルン自由州などの名称は、主に歴史的な背景によるものです。特にバイエルンは、ドイツの中でも独自のアイデンティティを有しており、独立した「共和国」の意味合いを込めてFreistaatを名乗っています。バイエルンはカトリック教徒が多く、政党も他の州とは独立性が高いという特徴があります。

同様に、ハンブルクとブレーメンは、ハンザ同盟という歴史的背景から「自由ハンザ都市ハンブルク」および「自由ハンザ都市ブレーメン」を称しています。この「自由」は、自由都市として得た特権、すなわち皇帝の主権からの自由を意味するものです。

まとめ

「自由州」という言葉は、ドイツの歴史の中で様々な意味を持ってきました。当初は君主からの自由を意味していましたが、共和制の導入とともに、国民が主権を持つ国家体制を指すようになりました。現代では、歴史的な名称として残っていますが、それぞれの州の独自性やアイデンティティを表すものとして、重要な意味を持っています。

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