自由民主党本部放火襲撃事件

自由民主党本部放火襲撃事件

自由民主党本部放火襲撃事件は、1984年に発生した日本の都市テロ事件であり、革命的共産主義者同盟全国委員会（中核派）が関与したとされるものである。この事件では、火炎放射器を使用して、自民党本部ビルに放火するという大胆な行為が行われた。

事件の背景と発生の経緯

1984年9月19日の夕方、東京都千代田区に位置する自由民主党本部の裏にある中華料理店の駐車場に、二台の小型トラックが荷物を配達するために停車した。運転手が店員に対して「宅配便です。印鑑をお願いします」と声をかけた隙をついて、数名がトラックの荷台から火炎放射器を取り出し、政治の中心地にあたる自民党本部に向けて火を放った。火焰は急速に広がり、党本部の北側の3階から7階にかけて大規模な火災を引き起こした。

この火災によって、党の事務局や会議室など約520平方メートルが焼失し、被害額は推定で10億円にも達した。事件当時、自民党は党総裁選挙を控えていたため、多くの職員や国会議員が集まっており、現場は混乱の極みに達した。これにより、放火行為は新たな次元の暴力行為として位置づけられることとなった。

事件の実行犯とその後の真相

放火事件の実行犯は、観察や準備を周到に行い、高度な計画性をもって襲撃した。その後、犯行声明が報道機関に送付され、中核派がこの襲撃を正当化する意図を示した。この声明では、政府に対する反抗の一環として、この行動を明示している。

事件直後、警察は現場付近で妨害電波の信号を検出し、捜査の手がかりを失う事態に直面したが、最終的に革命的共産主義者同盟の内部に潜む男の逮捕に成功した。1985年4月、逮捕された中核派活動家は、自身の無罪を主張し、裁判は長期にわたり続いた。

裁判の経過

逮捕された男性は、火炎放射器の準備や実行犯の逃走を助けた共同正犯として起訴されたが、彼のアリバイが認められ、証拠不十分により無罪が言い渡されることとなった。この結果は、目撃証言や物的証拠の不在が大きな要因となり、警察や検察官にとっては打撃となった。

また、中核派は1991年に別の事件を引き起こし、裁判官の車両に放火するという報復行動に出ている。このような過激な行為は、政治的な意図をもとにした暴力の連鎖を象徴するものであった。

事件の影響と教訓

この自由民主党本部放火事件は、日本におけるテロリズムの一つの顔を明らかにした。冷戦時代における社会運動やその影響力、さらには暴力的手法の選択がもたらした結果について、より深く考察する必要がある。また、事件に対する社会の反応や、その後の法制度の見直し、テロに対する対策も重要な課題として浮かび上がった。

火炎瓶による襲撃は1976年にも行われるなど、過去の政治的背景や社会情勢が何かしら関与している要因を探ることは、歴史を理解する上でも重要なポイントである。この事件は、単に一つの放火事件として片付けるべきではなく、時代の流れや人々の思想、行動について示唆に富む教訓を残している。

もう一度検索