自由民主国民党

オランダの自由主義政党：自由民主国民党（VVD）の全貌

オランダにおける自由主義政党の代表格、自由民主国民党（VVD、Volkspartij voor Vrijheid en Democratie）は、市場自由主義を強く支持することで知られる勢力です。本稿では、VVDの歴史、イデオロギー、政策、選挙結果、組織、そして支持基盤について詳細に解説します。

結党から1960年代前半：保守自由主義の時代

1948年、自由党と労働党からの自由主義左派の合流によってVVDは誕生しました。初期のVVDは、他の自由主義組織と連携しながら、オランダ政治に影響を与えていきます。1948年から1965年にかけては、複数の政権に連立与党として参加。しかし、党勢は安定せず、議席数は増減を繰り返しました。この時代のVVDは、保守的な自由主義を基調とし、「柱状化社会」と呼ばれるオランダ社会の枠組みの中で活動していました。

1960年代後半以降：党勢拡大と変革

1960年代後半以降、VVDは大きな変化を経験します。民主66（D66）の結成、社会変動の影響を受け、党首ハンス・ウィーゲルは労働者階級や中間層への支持拡大を目指しました。その戦略は奏功し、1970年代には党勢を拡大、複数の政権に与党として参加します。しかし、1980年代に入ると再び党内は揺れ動き、党首交代が繰り返されました。この時代は、VVDが党員数10万人を超えるなど、勢力を拡大した一方で、政権運営においては苦戦を強いられた時期でもあります。

1990年代以降：リベラルな改革と欧州への進出

1990年代には、フリッツ・ボルケスタインが党首に就任し、規制緩和や安楽死・売春の合法化など、リベラルな政策を推進しました。この時代、VVDは「紫連立」と呼ばれる政権に参加し、オランダ社会に大きな影響を与えました。ボルケスタインは後に欧州委員に就任、党首交代を経て、VVDは2000年代へと進みます。

2000年代以降：激動の時代とルッテ時代の到来

2000年代に入ると、VVDはピム・フォルタインリスト（LPF）の台頭や、フォルタイン殺害事件など、様々な政治的混乱を経験しました。党首交代を経て、マルク・ルッテが2006年に党首に就任します。ルッテは、2010年の選挙でVVDを初めて第一党に導き、以降、長きにわたって政権を担うことになります。ルッテ政権下では、オランダは経済的にも安定した時期を過ごしました。

2010年代以降：ルッテ政権と最近の動向

2010年代に入ると、ルッテ率いるVVDは安定した政権運営を続けました。しかし、2023年に行われた第二院選挙では、議席数を減らし、極右政党や左派連合に次ぐ第3勢力に転落しました。新たな党首ディラン・イェスィルギョズ＝ゼヘリウスの下で、VVDは今後のオランダ政治において、どのような役割を担っていくのでしょうか。

イデオロギーと政策：自由主義の堅持

VVDは自由主義を基本理念としており、「リベラルマニフェスト」と呼ばれる文書に、その政策理念を明確に示しています。市場の自由を重視しながらも、オランダの福祉国家体制も維持するという、バランス感覚が特徴です。民主主義、安全保障、自由、市民権を重視する姿勢は、一貫して維持されています。

支持基盤と党組織：多様な層へのアプローチ

VVDの支持基盤は、伝統的に富裕層、中間層、ホワイトカラー層とされてきました。しかし近年は、より幅広い層への支持獲得を目指していると考えられます。党組織としては、党大会、シンクタンク、青年組織、教育訓練機関など、様々な関連組織が活動しています。

結びに

自由民主国民党（VVD）は、オランダの政治史において重要な役割を果たしてきた政党です。市場自由主義を掲げながら、時代に合わせて政策を調整し、数々の政権に参画してきました。今後のVVDの動向は、オランダのみならず、ヨーロッパの政治情勢にも大きな影響を与えるでしょう。

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