自立活動

自立活動とは

自立活動は、障害のある児童生徒が、それぞれの障害による困難を克服し、社会で自立して生活するための力を育むことを目的とした、特別な教育指導領域です。特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室などで、教育課程の中で重要な位置を占めています。

概要

自立活動は、特別支援学校の学習指導要領に示された指導領域であり、各教科とは別に設けられています。これは、障害によって生じる様々な困難を改善し、社会への適応能力を高めるために、特別な指導が必要であるという考えに基づいています。

自立活動の指導は、「自立活動の時間」だけでなく、各教科や領域の指導の中でも適切に行われる必要があります。そのため、教育課程編成の方針として、自立活動の指導が学校全体で適切に行われ、特に自立活動の時間は、各教科と密接に関連し、個々の児童生徒の状態を考慮した計画に基づいて行われるべきとされています。

障害に由来する困難とは、自立した生活や社会活動を送る上で、様々な制約を受けることです。例えば、親子関係の構築、友人との遊び、学習活動への参加など、年齢相応の自立した生活を送る上で困難が生じることがあります。これらの困難に対して、環境調整や人的支援などの教育的・福祉的なサポートが行われます。しかし、障害があるからといって、自立する力が固定的なものではなく、教育的な関わりによって改善が期待できます。介護的な関わりは、発達段階に応じて必要な場合もありますが、さらなる成長を促すためには適切でない場合もあります。特別支援教育では、自立活動を全ての教育活動における重要な指導内容として位置づけ、教科や領域の指導と関連付けながら、「自立を目指した主体的な活動」を推進しています。これにより、児童生徒の生活をより良いものへと高めることを目指します。

障害を持つ人々が、何らかのサポートを受けながらも「自分で行うことができる」という事実は、自身の意欲を高め、周囲の信頼を得ることにも繋がります。これにより、人格が尊重され、権利が守られ、より自立した豊かな生活を送ることが可能になります。その結果として、健常者との垣根が取り払われた共生社会の実現につながると考えられます。

自立活動の目標

自立活動の目標は、以下の通りです。

個々の児童生徒が自立を目指し、障害による学習上や生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度、習慣を養い、心身の調和的発達の基盤を培う。

ここでいう「自立」とは、児童生徒がそれぞれの障害の状態や発達段階に応じて、主体的に自己の力を最大限に発揮し、より良く生きていこうとする姿を指します。

「調和的発達の基盤を培う」とは、発達の遅れや不均衡（個人内差）を改善したり、発達が進んでいる側面をさらに伸ばすことで、遅れている側面の成長を促し、全人的な発達を促進することを目指すものです。

自立活動の内容

自立活動の内容は、以下の6区分27項目に分けられます。（2018年4月より実施）

1. 健康の保持
生活リズムや習慣の形成
病気の状態の理解と生活管理
身体各部の状態の理解と養護
障害特性の理解と生活環境の調整
健康状態の維持・改善
2. 心理的な安定
情緒の安定
状況の理解と変化への対応
障害による学習上や生活上の困難を改善・克服する意欲
3. 人間関係の形成
他者との関わりの基礎
他者の意図や感情の理解
自己の理解と行動の調整
集団への参加の基礎
4. 環境の把握
保有する感覚の活用
感覚や認知の特性の理解と対応
感覚の補助及び代行手段の活用
感覚を総合的に活用した状況把握と行動
認知や行動の手掛かりとなる概念の形成
5. 身体の動き
姿勢と運動・動作の基本技能
姿勢保持と運動・動作の補助手段の活用
日常生活に必要な基本動作
身体の移動能力
作業に必要な動作と円滑な遂行
6. コミュニケーション
コミュニケーションの基礎的能力
言語の受容と表出
言語の形成と活用
コミュニケーション手段の選択と活用
状況に応じたコミュニケーション

自立活動の歴史

1971年、盲学校、聾学校、養護学校の学習指導要領で「養護・訓練」として初めて位置づけられました。その後、2000年に「自立活動」と名称が変更され、内容が修正されてきました。2009年には「人間関係の形成」が追加され、2017年には「障害の特性の理解と生活環境の調整」が新設されました。

関連情報

学校教育法
学校教育法施行規則
発達障害者支援法
障害者総合支援法
* 特別支援教育に関する資料

自立活動は、障害のある児童生徒が、それぞれの能力を最大限に伸ばし、自立した生活を送るための重要な教育活動です。教員だけでなく、保護者や地域社会全体で協力し、児童生徒の成長を支援していくことが求められます。

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