自衛隊日報問題

自衛隊日報問題

自衛隊日報問題とは、自衛隊がイラクや南スーダンに派遣されていた際に作成した日報を巡る一連の問題です。防衛省・自衛隊は当初、これらの日報は廃棄済みで存在しないと説明していましたが、実際には廃棄されておらず、情報隠蔽の疑念を招きました。この問題は、自衛隊の海外派遣活動が憲法9条に違反するのではないかという議論にも発展しました。

問題の背景

自衛隊の海外派遣は、活動地域が非戦闘地域に限定されています。しかし、問題となった日報には「戦闘」という文言が使用されているものもあり、派遣地域が本当に非戦闘地域だったのか、自衛隊が危険な地域に派遣されていたのではないかという疑念が生じました。また、防衛省が当初日報を廃棄済みとしていたことは、派遣地域が非戦闘地域ではなかった可能性を隠蔽しようとしたのではないかという疑念も抱かせました。

経緯

2016年：南スーダンPKO日報問題の発生

2016年9月30日、ジャーナリストの布施祐仁氏が、自衛隊南スーダン派遣部隊が作成した日報の情報開示を請求しました。同年12月2日、防衛省は「日報はすでに廃棄しており、文書不存在につき不開示」と回答しました。この回答に対し、布施氏が12月10日にTwitterで発信したところ、急速に拡散し、疑問の声が上がりました。その後、自民党の河野太郎氏や当時の防衛大臣稲田朋美氏が日報の再調査を求め、12月26日、統合幕僚監部に電子データとして残っていることが判明しました。

2017年：南スーダンPKO日報の公表

2017年1月20日に開会した第193回国会では、情報隠蔽や文民統制をめぐる懸念から、この問題が度々追及されました。1月27日、データの存在が防衛大臣に報告され、2月7日、防衛省は日報の存在を公表しました。当時、防衛監察本部防衛監察監であった北村道夫氏は、この事件が公益通報によって発覚したとし、同年3月から7月にかけて、監察対象機関を「本件日報の管理に関係する防衛省の機関等」とし、特別防衛監察を実施しました。しかし、防衛省情報本部は監察の対象外として調査されませんでした。7月28日、稲田朋美防衛大臣は引責辞任し、特別監察の結果が公表されました。その結果、陸上自衛隊が日報を開示せずデータを削除したとして、組織的な隠蔽が認定されました。この責任をとり、防衛事務次官や陸上幕僚長を含む幹部5人が処分されました。

2018年：イラク派遣日報の公表

2018年4月2日、防衛大臣小野寺五典氏は、前年の国会で不存在と答弁していた自衛隊イラク派遣時の陸上自衛隊の日報、合計376日分約14000ページが見つかったと発表しました。4月6日には、航空自衛隊でもイラク派遣時の日報3日分3ページを保有していることが公表されました。さらに、4月9日には、2017年の特別監察の対象外であった防衛省情報本部で、南スーダンPKO日報1年分以上が保管されていることが明らかになりました。
4月17日、小野寺防衛大臣は国会で、事後的に検証した結果、非戦闘地域を越えた活動は確認されなかったと説明しました。

脚注

参考文献

布施祐仁＋三浦英之『日報隠蔽　南スーダンで自衛隊は何を見たのか』（集英社，2018年，ISBN978-4-08-781652-5）

外部リンク

特別防衛監察の結果について - 南スーダンPKO日報問題
* 防衛大臣特別訓示

この問題は、情報公開のあり方、自衛隊の海外派遣活動における透明性、そして文民統制の重要性について、多くの教訓を残しました。

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