至聖三者大聖堂 (シカゴ)

シカゴの至聖三者大聖堂：ルイス・サリヴァンの革新的な正教会聖堂

シカゴのウクライナ・ヴィレッジ地区に位置する至聖三者大聖堂は、アメリカ正教会中西部主教区に属する重要な大聖堂です。この聖堂は、20世紀を代表する建築家の一人、ルイス・サリヴァンが設計を手がけたことで特に知られています。サリヴァンは、機能主義的な建築様式で知られていますが、この大聖堂では伝統的な正教会の様式と彼自身の独特なデザインセンスを融合させることに成功しました。

歴史

1895年、新たな教会堂の建設計画が持ち上がり、ロシア聖務会院の資金援助のもとで建設プロジェクトが開始されました。ロシア皇帝ニコライ2世が私財を提供したほか、アメリカの発明家で実業家のサイラス・マコーミックや、1893年のシカゴ万国博覧会で正教会の礼拝堂に感銘を受けた市民からの寄付も建設を後押ししました。

サリヴァンは、ロシア各地の教会建築を研究し、シベリア・タタルスカヤ地方の木造教会に着想を得て設計を完成させました。1902年3月31日に礎石が置かれ、1903年3月25日にはモスクワ総主教聖ティーホンによって聖別されました。1923年には主教座聖堂に昇格し、1970年代後半には司祭館とともにシカゴの歴史的建造物および国家歴史登録財に指定されています。

建築の特徴

煉瓦造りの大聖堂は、時を経て改築が繰り返されたため、サリヴァンのオリジナルデザインからの変更点が見られました。そのため、オリジナルのデザインに忠実な姿への復元と、教区コミュニティが利用しやすい施設への改修を目指し、大規模な改修プロジェクトが開始されました。2009年時点では、屋根と漆喰の修復が完了し、新しい暖房設備が導入されています。今後の改修では、屋根、金属部分、窓、正面の天蓋、漆喰などの修復に約200万ドルの費用が見込まれており、資金調達が進められています。

聖堂の基本的な形式は、正面の鐘楼、八角形のドームを持つ方形の身廊、イコノスタシスで区切られた至聖所など、正教会の聖堂の典型的な特徴を踏襲しています。外観は簡素ですが、サリヴァンの装飾が施されています。内装は、キエフの聖ヴォロディームィル大聖堂の壁画をモチーフにした絵画や金の装飾で飾られています。イコノスタシスはロシアで製作され、1912年に当時の駐中国アメリカ大使チャールズ・クレーンによって寄贈されました。

現在

至聖三者大聖堂は、アメリカ正教会中西部教区の主教座聖堂として、日々の礼拝が行われています。主任司祭であるジョン・アダムキオ長司祭の下、地域社会に貢献しています。この大聖堂は、シカゴの正教会コミュニティにとってかけがえのない存在であり、その美しい建築と信仰の拠り所として、今日も多くの人々に愛されています。

サリヴァンの建築様式と正教会の伝統が融合した至聖三者大聖堂は、アメリカの建築史においても重要な位置を占めています。簡素でありながらも荘厳な雰囲気を持つこの聖堂は、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。

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