興福寺 (長崎市)

長崎のあか寺：興福寺の歴史と文化

長崎県長崎市寺町に位置する興福寺は、日本最古の黄檗宗寺院として知られています。朱塗りの山門が印象的なことから「あか寺」の愛称で親しまれており、その歴史と文化は、日本と中国の交流を深く物語っています。

日本における黄檗宗の礎

1624年（寛永元年）、中国僧・真円によって創建された興福寺は、日本最初の唐寺として歴史に名を刻んでいます。崇福寺、福済寺とともに「長崎三福寺」の一つに数えられ、福建省、浙江省、江蘇省出身の信徒が多く、かつては「南京寺」とも呼ばれていました。

特に重要なのは、黄檗宗の開祖である隠元隆琦禅師との深い繋がりです。隠元禅師ゆかりの寺院として、本堂にあたる大雄宝殿は国の重要文化財に指定されており、その荘厳な姿は多くの参拝者を魅了しています。隠元禅師は福建省出身であり、興福寺は黄檗宗の教えのみならず、インゲンマメなどの文化交流の拠点としても重要な役割を果たしました。現在も、この歴史的繋がりを活かした福建省との文化交流事業が盛んに行われています。

戦後復興と新たな梵鐘

興福寺の鐘鼓楼は、1962年（昭和37年）に長崎県指定の有形文化財に指定されました。重層式の建物に梵鐘と太鼓が安置される設計でしたが、太平洋戦争中の供出により梵鐘は失われていました。

しかし、2019年（令和元年）、福建省省長の于偉国氏が興福寺を視察した際にこの事実を知り、新たな梵鐘の寄贈を提案。中国国内で製造された新しい梵鐘は、2021年（令和3年）2月に興福寺に届けられ、鐘鼓楼に設置されました。この出来事は、日中友好の象徴として大きな話題となりました。

貴重な文化財の数々

興福寺には、数多くの文化財が保存されています。

国指定重要文化財として、大雄宝殿が挙げられます。寛永9年（1632年）に2代住持・黙子如定によって建立された最初の建物は火災で焼失しましたが、元禄2年（1689年）に再建されました。その後、慶応元年（1865年）の暴風で大きな被害を受けましたが、明治16年（1883年）に修復され、現在もその美しい姿を見せています。その他、旧唐人屋敷門（長崎市所有）なども重要文化財に指定されています。


県指定有形文化財には、山門、媽祖堂（天海司命堂）、鐘鼓楼、瑠璃燈、三江会所門、中島聖堂遺構大学門（長崎市所有）、黄檗開祖国師三幅対などが含まれます。


市指定有形文化財は、黄檗開祖国師三幅対、興福寺の瑠璃燈などがあります。


境内全体が県指定史跡に指定されており、歴史的価値の高さがうかがえます。

アクセス

最寄りの駅は、長崎電気軌道市民会館停留場です。

まとめ

興福寺は、単なる寺院としてだけでなく、日中友好の歴史、黄檗宗の精神、そして貴重な文化財を凝縮した、まさに歴史と文化の宝庫です。長崎を訪れた際は、ぜひ訪れて、その魅力を体感してください。

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