航空管制技術官

航空管制技術官とは

航空管制技術官（通称：管技官）は、航空機の安全かつ効率的な運航を確保するために不可欠な存在です。彼らは、航空保安無線施設や管制施設といった専門的な設備の整備・維持を担う技術者であり、航空保安業務を支える国家公務員として、全国各地の空港事務所や航空交通管制部に配属されています。

彼らの業務は、航空機の航行に欠かせない無線通信やレーダーシステム、管制情報処理システムなど、多岐にわたる施設の維持管理を行うことです。これらの施設が正常に機能することで、航空機は安全に離着陸し、空の旅を続けることができるのです。

航空管制技術官になるには

航空管制技術官になるためのルートは主に二つあります。一つは、国土交通省が管轄する航空保安大学校の航空電子科に入学し、2年間の研修を受ける方法です。もう一つは、国土交通省航空局が行う募集に応募し、採用される方法です。

外部からの応募の場合、第二級陸上無線技術士以上の資格が必須となります。しかし、これらのルートを経て採用されたとしても、すぐに航空管制技術官として業務に就けるわけではありません。採用後には、専門的な研修（AIR TRAFFIC ENGINEERING SPECIALIST CERTIFICATE）を修了し、さらに航空管制技術官試験に合格する必要があります。この試験に合格して初めて、正式に航空管制技術官として認められます。

なお、自衛隊が管理する飛行場においては、隊内で養成された隊員が航空管制技術官の役割を担っています。

航空管制技術官が扱う施設

航空管制技術官が整備・維持を行う施設は、大きく分けて以下の三つに分類されます。

航空保安無線施設

航空機の航行を支援する重要な無線施設です。

VOR (VHF Omni-directional Range): 超短波全方向式無線標識
DME (Distance Measuring Equipment): 距離測定装置
TACAN (Tactical Air Navigation): 戦術航空航法装置
ILS (Instrument Landing System): 計器着陸装置
MSAS (MTSAT Satellite-based Augmentation System): 多機能衛星補強システム
GBAS (Ground Based Augmentation System): 地上型衛星補強システム

航空通信施設

航空機と管制官の間で交わされる無線通信を支える施設です。

A/G (Air-to-Ground Communication): 地上対空通信
RAG (Remote Air-Ground Communication): 遠隔対空通信
RCAG (Remote Controlled Air-Ground Communication): 遠隔制御対空通信
ATIS (Automatic Terminal Information Service): 飛行場情報放送
AEIS (Aeronautical Enroute Information Service): 航空路情報放送
HF-AG (High Frequency Air-Ground Communication): 短波地上対空通信
VHF-AG (Very High Frequency Air-Ground Communication): 超短波地上対空通信
ATM-COM (Air Traffic Management Communication): 航空交通管理通信
DLCS (Data Link Communication System): データリンク通信システム

レーダー施設

航空機の位置を把握するためのレーダーシステムです。

ASR (Airport Surveillance Radar): 空港監視レーダー
SSR (Secondary Surveillance Radar): 二次監視レーダー
PAR (Precision Approach Radar): 精密進入レーダー
ASDE (Airport Surface Detection Equipment): 空港面探知装置
ARSR (Air Route Surveillance Radar): 航空路監視レーダー
ORSR (Oceanic Route Surveillance Radar): 洋上航空路監視レーダー
RML (Radar Message Link): レーダーメッセージリンク
DRDE (Digital Radar Data Extractor): デジタルレーダーデータ抽出器
MLAT (Multilateration): マルチラテレーション
WAM (Wide Area Multilateration): 広域マルチラテレーション
HARP (High Accuracy Radar Processor): 高精度レーダープロセッサー
SLIM (Secondary surveillance radar with Low power Interrogation Mode): 低電力質問モードを備えた二次監視レーダー

管制情報処理システム施設

航空管制業務を効率的に行うための情報処理システムです。

TRAD (Target Radar Data Processing System): レーダー目標情報処理システム
FACE (Flight data Automatic Control Equipment): 飛行データ自動制御装置
ICAP (Integrated Communication Control and Processing System): 統合通信制御処理システム
TAPS (Terminal Area Processing System): ターミナル空域処理システム
ADEX (Air Traffic Data Exchange System): 航空交通データ交換システム
TEPS (Traffic Engineering & Planning System): 交通工学計画システム
TOPS (Total Operation Processing System): 総合運用処理システム
AMHS (Aeronautical Message Handling System): 航空メッセージ処理システム
TEAM (Total Electronic Air traffic Management): 電子航空交通管理システム
CRMS (Contingency and Recovery Management System): 緊急時対応および復旧管理システム
A-CDM (Airport Collaborative Decision Making): 空港協調意思決定

航空管制技術官に必要な無線資格

航空管制技術官として業務を行うためには、以下のいずれかの無線資格が必要となります。

第一級陸上無線技術士
第二級陸上無線技術士
第一級総合無線通信士

これらの資格は、航空保安無線施設の運用や管理に必要な専門知識と技能を証明するものです。

研修体制

航空管制技術官の研修は、全国の航空官署と航空保安大学校本校（大阪府泉佐野市）、航空保安大学校岩沼研修センター（宮城県岩沼市）で行われます。これらの研修施設では、座学だけでなく、実際の機器を用いた実践的な訓練も行われ、航空管制技術官としての能力が養われます。