船越弘 (益子焼の陶芸家)

船越弘 - 陶芸家の軌跡

船越弘（ふなこし ひろし）は、1958年に埼玉県熊谷市に生まれた日本の陶芸家です。彼は栃木県益子町で「天青窯」という自身の窯元を運営し、特に「スリップウェア」という特殊な技法を用いた器の製作に定評があります。

陶芸との出会い

船越が陶芸に興味を持つきっかけは、建築関係の勉強をしていた頃にいわゆる「陶壁」の製作に関わったことから始まります。1979年、彼は益子町にある陶壁専門の会社「益子陶飾」に入社しました。陶壁だけに興味を持っていた彼ですが、益子に住むうちに陶芸の先人たちへの関心が湧き、徐々に益子焼の器への思いも深まっていきました。

初めての師匠との出会い

1991年、偶然に益子焼の陶芸家である木村充の元を訪れた際、彼は自身の子どもと一緒に木村の元に遊びに行きました。その時、子ども好きな木村から気に入られ、結果的に彼の弟子となることが決まりました。師匠の木村は弟子を取らない主義でしたが、船越に対しては特別な思いを抱いたようです。以降8年間、彼は日中は益子陶飾で働き、夜は木村のアトリエで陶芸技術を磨く日々を送りました。

独立への道

8年の修行を終えた後、船越は益子陶飾を退社し、宇都宮陶芸倶楽部の講師として働き始めました。さらに木村の助手を務めながら、自身の陶芸活動をスタートさせます。しかし、1998年に木村が急逝し、船越は師匠の展示会を引き継ぐことに。2004年には益子町道祖土に自らの窯を築いて独立を果たしました。

作風と技術

船越の陶芸スタイルには、師匠である木村充の影響が色濃く反映されています。また、彼が現在特に力を入れているスリップウェアは、木村充の義父である木村一郎からの影響が強いと言われています。この技法は、器にスリップ（陶土に水を織り交ぜた液体）を塗ることによって、独特の風合いを生み出します。

地域との繋がり

船越は、益子町の地域コミュニティグループ「ヒジノワ」にも参加し、夫婦で多様なイベントやワークショップにも関与しています。益子陶器市では、ヒジノワマーケットの運営に貢献し、地域活性化に努めています。彼の活動は、陶芸を通じて地域の魅力を再発見し、人々をつなげる役目も果たしています。

高い技術力と独自の感性を持つ船越の作品は、益子焼の新たな可能性を探求し続けています。今後の活躍が期待される陶芸家のひとりです。

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