艦本式ボイラー

艦本式ボイラーとは

艦本式ボイラー（かんほんしきボイラー）は、日本海軍艦政本部によって開発された国産の艦艇用ボイラーです。このボイラーは、漢字で「汽罐」と表記され、略して「罐」とも呼ばれます。一般には「艦本式缶」という名称でも知られています。日本の艦艇技術の進化を支えた重要な設備であり、特に20世紀初頭から太平洋戦争にかけて多くの艦船に搭載されました。

型式別の概要

艦本式ボイラーは、いくつかの型式に分類されており、それぞれの特徴があります。主な型式には、イ号艦本式缶、ロ号艦本式缶、ハ号艦本式缶、ホ号艦本式缶の4種類があります。

イ号艦本式缶

イ号艦本式缶は、1900年（明治33年）に老朽化した水雷艇のボイラー交換用として開発されました。このボイラーは、イギリスのヤーロー社製ヤーロー式ボイラーを改良して作られたもので、1902年（明治35年）に進水した第67号水雷艇に初めて搭載されました。この型式のボイラーは、春雨型駆逐艦などでも使用され、当時の艦船において重要な役割を果たしました。

イ号艦本式缶は、三胴式の水管ボイラーの一種で、上部には大直径の「蒸気ドラム」、下部には2本の小直径の「水ドラム」が配置されています。これにより、効率的な蒸気の生成が可能となりました。

ロ号艦本式缶

ロ号艦本式缶は、イ号艦本式缶の改良型で、1914年（大正3年）に登場しました。この型式は、水ドラムの水管継ぎ目に圧力偏在から生じる腐食による問題を解消するため、形状を変更し、水管継ぎ目を平滑にする工夫がされました。この結果、それまでのイ号と新たなロ号の2種類が存在することになります。太平洋戦争中には、このロ号艦本式缶を多数の艦艇が採用しました。

ハ号艦本式缶

ハ号艦本式缶は、扶桑型戦艦の2次改装後に搭載された型式です。数は限られていますが、艦の性能向上に寄与したとされています。

ホ号艦本式缶

ホ号艦本式缶は、艦政本部と舞鶴工廠が共同で開発した小出力ボイラーです。このボイラーは、水を通す水管を片側にまとめることで、コンパクトでありながらも高い効率を発揮しました。1937年（昭和12年）度に完成した第53駆潜艇に初めて搭載され、橋立型砲艦や香取型練習巡洋艦、さらには占守型海防艦の補助ボイラーとしても使用されました。

参考文献

この艦本式ボイラーに関する詳細な情報は、佐藤健一郎による「橋立型に装備されたボイラー」（『写真 日本の軍艦 第9巻 軽巡II』、光人社、1990年）や、日本造船学会の『昭和造船史 第1巻』（原書房、1981年）から得られます。艦本式ボイラーは、艦船技術の進化において重要な役割を果たした技術の一つです。個々の型式が時代の要求に応える形で進化していったことが、このボイラーの歴史的意義を物語っています。

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