芥子坊主

芥子坊主（けしぼうず）

芥子坊主とは、ケシの果実を指す言葉です。ケシの未熟な果実からは阿片が採取されますが、同じケシ属でもオニゲシやヒナゲシには阿片成分はほとんど含まれていません。

また、江戸時代には、3～4歳くらいの少年少女の間で流行した髪型の一つでもありました。別名、すずしろ、お芥子とも呼ばれていました。

江戸時代の子供の髪型としての芥子坊主

江戸時代、長屋に住む一般的な町人の子供たちは、寺子屋に通ったり徒弟奉公に出されるまでの間、手入れの手間を省くために丸坊主にすることが一般的でした。

芥子坊主の基本的なスタイルは、頭頂部（脳天）に筆の穂先のようにわずかに髪を残し、他を丸坊主にするというものでした。この髪型がケシの実に似ていることから、「芥子坊主」と呼ばれるようになったと言われています。

しかし、芥子坊主には様々なバリエーションがあり、

前髪のみを短く残す
頭の両側に髪を残す
前髪と後頭部に髪を残す

など、親の好みや考えによって様々な形が見られました。子供の成長に合わせて髪を残す部分を増やし、ある程度髪が伸びると「角大師」と呼ばれる髪型に移行しました。

一部の髪を残す理由としては、

子供が水難事故に遭った際、氏神様が残された髪を掴んで引き上げてくれる

という言い伝えがありました。しかし、様々な形が存在することから、親が自分の子供を見分けるための目印としての役割も担っていたと考えられています。

女児の場合、幼児期（6歳くらいまで）は前髪、脳天、両鬢、後頭部（髷を作るあたり）の5ヶ所に髪を残して丸坊主にし、眉も剃っていました。髪を伸ばし始めると、「おたばこぼん」や「銀杏髷」といった髪型に変化していきました。

芥子坊主と伝承

地方によっては、河童の頭部がこの髪型であるという伝承も存在します。徳島県には「ケシボウズ」という山に出る赤子の妖怪の伝承があるそうです。

現代への影響

2006年現在、前髪を残すタイプの芥子坊主は、時代劇『子連れ狼』に登場する少年「拝大五郎」役の子役が被る鬘にちなんで「大五郎カット」と呼ばれ、親しまれています。

2002年のワールドカップでは、サッカーブラジル代表のロナウド選手の髪型が偶然「大五郎カット」によく似ていたため、日本で大きな話題を呼びました。

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