蹴りたい背中

『蹴りたい背中』は綿矢りさが手がけた中編小説で、2003年に『文藝』に掲載された後、同年8月に河出書房新社から単行本として出版されました。本作は、2003年下半期に行われた第130回[[芥川龍之介賞]]を、金原ひとみの『蛇にピアス』とともに受賞したことで広く知られるようになりました。

基本情報

物語は、高校1年生の女の子である初実（はつみ）が主人公です。彼女は陸上部に属しており、周囲に溶け込むことができず、孤独を感じています。物語の中で彼女が出会うのは、同級生でアイドルファンのにな川です。まして、ハツは彼との交流を通じ、多くの感情を経験しながら成長していきます。

「蹴りたい背中」というタイトルは、愛着と苛立ちが交錯し、思わずにな川の背中を蹴りたくなるような微妙な感情を表現したものと推測されています。

あらすじ

物語は、理科の授業でハツが仲間外れにされるところから始まります。彼女は同じ班のにな川が読んでいる女性ファッション誌のモデル、オリチャンに目を留めます。実は、ハツは中学時代にオリチャンに偶然会ったことがあるため、にな川にそのことを話すと、彼は興味を示します。放課後、ハツはにな川の家に招かれ、彼がオリチャンの熱烈なファンであることを知ります。

その後、ハツは、にな川に頼まれる形で、オリチャンに会った無印良品へ出かけることになります。二人は、とな川の家で休憩をしながら親しくなりますが、ハツはある日、にな川が作ったオリチャンのアイコラを見つけてしまい、ショックを受けてしまいます。思わず、ハツはにな川を蹴り飛ばしてしまい、そこから関係にひと波乱が生じます。

にな川はその後、数日間学校を休みますが、実は彼は徹夜でオリチャンのライブのチケットを入手しようとして風邪を引いてしまっていました。彼が持っている4枚のチケットを巡り、ハツは友人の絹代を誘い、3人でライブに行くことになります。ライブの後、ハツは期待と戸惑いの中で、にな川との関わりを深めていきます。

登場人物

- ハツ（初実）：主人公。人間関係に冷めた目を持つ高校1年生で、陸上部に所属。
- にな川：ハツの同級生でオリチャンの熱狂的なファン。オタク的な一面を持つ。
- 絹代：ハツの中学時代からの友人で、社交的な性格を持つ。
- オリチャン：モデルとして登場する人物。27歳でハーフの可能性がある。

評価

本作は、芥川賞選考会で異なる意見が交わされ、三浦哲郎からは「不可解な文章」と評されましたが、他の選考委員は本作の魅力を支持しました。文芸批評家たちからは、話の展開が独特であることや表現力に関して賛辞を浴びるなど、文学的評価がきわめて高い作品です。

この作品は、ただの恋愛物語ではなく、青春の葛藤や自己認識を描く作品として、多くの読者を惹きつけています。

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