花いちもんめ (長渕剛の曲)

長渕剛「花いちもんめ」：恋愛への皮肉と、叶わぬ願いを込めた一曲

1982年4月21日、日本のシンガーソングライター、長渕剛の9枚目のシングル「花いちもんめ」が東芝EMIのエキスプレスレーベルよりリリースされました。作詞は長渕剛と松井五郎、作曲は長渕剛、編曲は長渕剛と瀬尾一三という布陣で制作されたこの曲は、恋愛観への皮肉を巧みに織り込んだ数え歌が特徴です。

世間への皮肉を込めた数え歌

「花いちもんめ」は、一般的な恋愛観に対する皮肉を、テンポの良い数え歌に乗せて表現した楽曲です。長渕剛の作品としては珍しい、松井五郎との共作という点も注目に値します。音楽情報サイト『CDジャーナル』では、この曲を「うぉー」という雄叫びから始まる歌謡ロックと評し、1から10までの語呂合わせを織り込んだ歌詞と、ブラスセクションによる重厚なアンサンブルを特徴として挙げています。また同サイトは、楽曲中に散りばめられた“おっとどっこい危険だぜ”といった、長渕剛独特の表現にも注目すべきだと指摘しています。

音楽性とアレンジ

楽曲は、力強い歌声と、ブラスセクションによる華やかなサウンドが印象的です。長渕剛の持ち味であるストレートな表現と、数え歌というユニークな構成が融合し、聴くものを惹きつける独特の世界観を作り上げています。シンプルながらも奥深い歌詞は、恋愛における複雑な感情を巧みに表現しており、聴く人の心に深く響くでしょう。

商業的な成功と、アーティストの願い

オリコンチャートでは最高位55位、登場回数9回という結果に終わりましたが、売上枚数は3万枚を記録しました。しかし、この数字は、長渕剛自身のキャリアにおいては必ずしも成功とは言えませんでした。彼は後に、「この曲だけは、売れてほしかった」と語っています。当時、長渕剛は1980年の大ヒット曲「順子」以降、作品が思うように売れず、低迷期にあったのです。「花いちもんめ」は、そんな時期に制作された、彼の強い願いが込められた作品だったと言えるでしょう。

アルバム収録について

「花いちもんめ」は、オリジナルアルバムには収録されず、1983年のベストアルバム『FROM T.N.』で初めて収録されました。その後、1997年の『SINGLES Vol.1 (1978〜1982)』にも収録されていますが、シングル曲としては、彼の他の作品に比べて、アルバムへの収録機会は限られています。このことは、「花いちもんめ」が、商業的な成功という点では必ずしも彼の代表作とは言えないものの、アーティストとしての彼の思い入れの強さを示していると言えるのかもしれません。

まとめ

「花いちもんめ」は、恋愛への皮肉と、アーティストとしての葛藤が複雑に絡み合った、長渕剛の代表曲の一つと言えるでしょう。商業的な成功は収めませんでしたが、その独特の音楽性と、長渕剛自身の強い思い入れによって、多くのファンを魅了し続けています。聴く者の心に深く刺さる歌詞と、力強い歌声、そしてブラスアレンジによる壮大で華やかなサウンドは、今もなお多くのリスナーに感動を与え続けているのです。

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