花情曲

花情曲（はなのこえ）

皇なつきによる日本の漫画作品『花情曲』は、中国の古典『聊斎志異』に収録された「菊の精を娶る話」を原案とした連作短編漫画。

概要

本作は、以下の5つの物語で構成されています。

1. 花情曲（1990年）
2. 蝴蝶至春園（1991年）
3. 天網の疎（1995年）
4. 花の薫る日（1997年）
5. 恋泉（1997年）

各話は独立した物語でありながら、共通の世界観を持ち、登場人物たちの運命が複雑に絡み合っています。清朝時代を舞台に、人間の欲望や葛藤、そして美しいものへの憧憬が描かれています。

あらすじ

科挙に首席で合格した青年・宋貴祥（そうきしょう）は、都で最も美しい牡丹を探していました。ある日、廃寺である玉縁寺で、息をのむほどに美しく咲き誇る牡丹に出会います。貴祥がその花を手折ろうとしたところ、花番の少年・如春（ルーチュン）に咎められます。如春から別の牡丹を譲り受けた貴祥は、その牡丹の美しさに魅了され、宰相の目に留まります。宰相は自分の娘を貴祥に紹介しますが、貴祥の心は既に如春から貰った牡丹に奪われていました。

その夜、如春が昼間に手折るのを禁じた牡丹を持参し、「これは僕の姉の待春（タイチュン）です」と告げます。貴祥は半信半疑ながらも、言われた通りに牡丹に水をやると、花はたちまち美しい娘の姿へと変わりました。宰相の思惑を知らず、待春に一目惚れした貴祥は、すぐに彼女と愛し合うようになります。しかし、宰相の娘との縁談は着々と進んでおり、貴祥は愛する待春との未来か、出世の道を選ぶかという、究極の選択を迫られることになります。

主な登場人物

宋 貴祥（ソン クイシャン）

本作の主人公。科挙に首席で合格した秀才。恋愛には奥手で、ひたすら学問に励んできた青年。詩の才能にも長けており、彼の新作は都中で待ち望まれています。
待春（タイチュン）

本作のヒロイン。牡丹の花の精。その美しさは比類なく、見る者を魅了します。牡丹の育成に長けており、彼女が育てた牡丹は高値で取引されます。しかし、気に入った相手には無償で譲ることもあります。
如春（ルーチュン）

牡丹の花の精で、待春の弟。姉と貴祥の仲を取り持ちますが、予想以上に二人の仲が深まったことに驚いています。
程（チェン）

科挙に次席で合格した青年。苦労を共にしてきた妻に支えられ、子供もいます。作者のお気に入りのキャラクターであり、彼と幼なじみの妻との後日談も構想されていましたが、実現には至りませんでした。

その他の収録作品

単行本には、以下の作品も収録されています。

虎嘯（1991年）
蛇姫御殿（1990年）
狐媚（1997年）

書誌情報

本作は、角川書店、潮出版社、エンターブレインから様々な形態で刊行されています。

角川書店版（絶版）
花情曲（1991年）
恋泉 -花情曲余話-（1998年）
潮出版社文庫版
花情曲（2005年）
エンターブレイン特装版
恋泉 特装版（2010年）
角川書店復刊版（B5判）
花情曲（2019年）
* 恋泉 -花情曲余話-（2019年）

『花情曲』は、美しい絵柄と幻想的なストーリーで、多くの読者を魅了し続けています。特に、花を擬人化したキャラクターたちの繊細な描写は、皇なつき作品ならではの魅力と言えるでしょう。

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