花扇太夫

花扇太夫（はなおうぎ たゆう）は、京都市出身の島原太夫です。本名を服部佳子といい、旧姓は北村、1947年12月21日生まれ。

京都市木屋町で「もち料理きた村」という料理店を営む家庭に生まれました。幼い頃から日本舞踊に親しみ、わずか3歳で初舞台を踏むなど、早くから表現の世界に触れています。母方の祖母である七五三香（しめか、本名：高木朋子）は、かつて大阪の南地で活躍した芸妓であり、京都市木屋町でお茶屋を経営していました。このお茶屋は、後に祖母の養女である母によって、現在の「もち料理きた村」へと業態転換されたものです。

華頂短期大学幼児教育科を卒業後は、幼稚園教諭として社会人経験を積みました。その後も、十二単の着付けモデルを務めるなど、日本の伝統文化や装束に関わる機会を得ています。さらに、宮内庁で伝承される神楽を習得し、王朝時代の舞を演じる舞手としても活動しました。こうした多岐にわたる経験は、後の太夫としての活動における素養を培うことになったと言えるでしょう。

花扇氏が島原の太夫となるきっかけは、地歌を師事していた故・山村たか氏のもとに持ち込まれた話にありました。「島原で太夫となる人物を探している」という話を聞き、その縁から伝統ある島原の世界に足を踏み入れることとなります。

島原太夫は、江戸時代から続く京都島原の花街に伝わる格式ある存在です。太夫は、単に美しい着物をまとい舞を披露するだけでなく、和歌や連歌、茶道、華道、香道など、高度な教養と芸を備え、客をもてなすことが求められます。花扇太夫もまた、こうした伝統に根ざした活動を行っています。

現在、花扇太夫は島原太夫としての本職を続ける傍ら、京都市内でバーを経営しています。また、全国各地で講演会を開き、自身の経験や島原の文化について語るなど、幅広い活動を展開しています。その人生は、伝統文化の世界に生きつつも、現代社会と関わりを持ち続ける柔軟な姿勢を示しています。

自身の著書『太夫になった京おんな』（白馬社、2004年）では、その半生や島原太夫という生き方について綴っており、多くのメディアでも紹介されています（京都新聞連載、ニッケイ・ネット、麻生圭子の茶わん眼鏡など）。

幼い頃からの舞の経験、祖母から受け継がれた芸の血筋、そして幼稚園教諭や王朝舞手としての多様なキャリア。これらの経験が、花扇太夫という独自の存在を形作り、伝統の世界に新たな息吹をもたらしていると言えるでしょう。

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