花月園遊園地

花月園遊園地の栄枯盛衰

花月園遊園地は、1914年（大正3年）に実業家の平岡廣高によって「花月園」として開園しました。フランスのフォンテンブローにあった遊園地をモデルに作られたとされ、開園当初の敷地は2万5千坪でした。園内には動物園、噴水、花壇、ブランコなどの施設があり、その後「大山すべり」や「豆汽車」といったアトラクションも追加され、多くの人々で賑わいました。

大正ロマンを象徴する遊園地

近隣には京浜電気鉄道（現在の京浜急行電鉄本線）の花月園前駅（現在の花月総持寺駅）が開設され、来場客のアクセスも便利になりました。園内の売店では、花月園名物のまんじゅうが飛ぶように売れ、ダンスホールは谷崎潤一郎の小説『痴人の愛』の舞台にもなりました。また、宝塚遊園地の宝塚歌劇団に倣い、花月園少女歌劇団を結成し、宝塚との交流も行ったことから、『西の宝塚・東の花月園』とまで評されるほどの人気を博しました。

1925年（大正14年）には入場者数がピークを迎え、敷地面積は7万坪にまで拡大しました。当時、10万坪と公称していましたが、これは誇張された数字です。しかし、その規模は国内有数であり、東洋一の遊園地と称されることもありました。

人気の衰退と経営譲渡

しかし、近隣に多摩川園や三笠園といった新たな遊園地が開園すると、花月園遊園地の人気は徐々に衰退していきました。1933年（昭和8年）には600万円もの負債を抱え、経営権は京浜電気鉄道や大日本麦酒などが設立した株式会社花月園に譲渡されました。

その後、花月園遊園地は京浜電鉄の集客施設として存続しましたが、株式会社花月園の経営権は、多摩川園を経営する東京急行電鉄、続いて日本鋼管などが設立した京浜工業協会（後の鶴見工業会）に移譲されることになります。各社従業員の慰安施設として利用される一方、高台にあったことから高射砲陣地としても活用され、遊具の部品は工業用品に流用されました。

閉園とその後

終戦後は事実上放置状態にありながら運営が続けられていましたが、1946年（昭和21年）11月に閉園となりました。その後、跡地には競輪場が設置されることになり、神奈川県に買収される形で、1950年（昭和25年）1月に株式会社花月園は解散しました。花月園遊園地の跡地は、新たに設立された花月園観光によって花月園競輪場となりましたが、2010年（平成22年）3月に開催が廃止されました。

花月園競輪場も解体され、現在は防災公園を兼ねた鶴見花月園公園となっています。往時の賑わいを偲ぶことはできませんが、その歴史は語り継がれています。

女優の五大路子が座長を務める演劇劇団『横浜夢座』は、花月園全体の歴史を舞台化した『ジャンジャン花月園』を2010年（平成22年）11月に公演し、再び人々の記憶に花月園の名を刻みました。

参考資料

『花月園観光三十年史』花月園観光 1980年

斎藤美枝『鶴見花月園秘話 東洋一の遊園地を創った平岡廣高』鶴見区文化協会 2007年

外部リンク

横浜開港資料館 関東の大遊園地・花月園と平岡廣高
横浜夢座『ジャンジャン花月園』

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