花火音頭

「花火音頭」（はなびおんど）は、日本の歌手、橋幸夫が2006年11月29日にビクターエンタテインメントから発売した通算172枚目のシングル盤です。本作は12cmCD（品番：VICL-36196）とカセットテープ（品番：VISL-30613）の二形態で市場に登場しました。

楽曲制作の背景とコンセプト

この時期、橋幸夫は自身のライフワークとして「祭りの復権」を掲げ、日本の伝統的な祭事における音頭や踊り唄といったジャンルに特に力を入れていました。前年の2005年に自身のデビュー45周年を記念して発表した「盆ダンス」もその一環であり、「花火音頭」はこの「盆ダンス」の流れを汲む作品として位置づけられています。橋自身は本作を「祭りと踊りを融合させた『盆ダンス』のパート2のようなもの」と語っています。

楽曲制作の直接的なきっかけとなったのは、橋の兄弟弟子であり、長年にわたり多くの楽曲で振付を担当してきた花柳糸之からの提案でした。花柳は、「盆ダンス」に続く新作について検討する中で、「日本中で盛大に行われる花火大会には、意外と広く知られた歌がないのではないか」という着想から、花火をテーマにした楽曲の制作を提案しました。この提案を受け、経験豊富なベテランたちが集結したチームでの制作が決定します。

制作チーム

「花火音頭」の制作には、以下のメンバーが携わりました。

作詞: 荒木とよひさ
橋がビクターへ復帰してからリリースした股旅作品「面影渡り鳥」以来、実に10年ぶりの協業となりました。
作曲: 橋幸夫
初期には「風間史朗」、この頃は「勅使原煌」といったペンネームで作曲活動を行うこともありましたが、本作では自身の名義である「橋幸夫」を使用しています。
編曲: 池多孝春
レコード大賞で編曲賞を受賞するなど、実績のある池多孝春が担当しました。
振付: 花柳糸之
企画の発端となった花柳糸之が担当しました。

楽曲の企画段階から深く関わった橋幸夫と花柳糸之は、レコードのクレジットにおいてもそれぞれ「企画・歌唱」「企画・振付」として「企画」の文字が冠されています。また、歌詞カードには、花柳糸之による振付が連続写真で分かりやすく掲載されており、購入者が容易に踊りを楽しめるよう配慮されていました。

発売時期とその理由

シングルの発売が11月下旬という、一般的な夏祭りシーズンからは外れた時期になったことには理由がありました。これは、発売直後の同年12月に大阪新歌舞伎座で開催された橋の舞台公演において、第2部歌謡ステージのプログラムにこの新曲を組み込むことが決まっていたためです。公演に合わせて楽曲を披露するための戦略的なリリース時期であったと言えます。

カップリング曲

本作には、「花火音頭」の他に3曲のカップリング曲が収められています。

1. 炭坑節
福岡県の代表的な民謡です。編曲は表題曲と同じく池多孝春が担当しました。
2. 東京音頭
作詞：西条八十、作曲：中山晋平によるお馴染みの音頭です。橋幸夫はかつて1964年に三沢あけみとのデュエットバージョンをリリースしていますが、本作に収録されているのは、新たに録音された橋のソロ歌唱バージョンです。こちらも編曲は池多孝春が手がけています。
3. 燃えろ日本の夏まつり
作詞：長山たかのり、作曲：勅使原煌、編曲：松井忠重。この楽曲は、元々「燃えろ水戸の夏まつり」として存在した楽曲の歌詞を一部変更し、新たに録音されたバージョンが収録されています。

収録アルバム

「花火音頭」は、以下のアルバムにも収録されています。

『橋幸夫ベスト～踊り唄～』（2008年11月19日発売）
『ビクター最新歌謡ヒット』（2007年9月21日発売）

これらのアルバムを通じて、本作を含む橋幸夫の音頭・踊り唄の世界に触れることができます。

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