芳武茂介

芳武茂介のクラフトデザインの軌跡

芳武茂介（よしたけ もすけ、1909年11月12日 - 1993年8月3日）は、山形県南陽市出身の日本を代表するクラフトデザイナーです。彼のデザイン理念は「見る工芸」ではなく「使う工芸」を重視しており、日常生活に密着した機能的なデザインを追求しました。

経歴と業績

芳武は1935年に東京美術学校（現・東京芸術大学）を卒業し、商工省工芸指導所でキャリアをスタートさせました。彼が初めて注目を集めたのは1941年、出品した「飛鳥置物」が第4回新文展で特選を受賞したことでした。この受賞を契機に、彼はクラフトデザイン界での地位を確立していきました。

第二次世界大戦中には、日本陸軍のために囮飛行機の開発に携わるなど、技術者としての一面も持っていました。戦後はクラフトデザインの分野での活動に専念し、1956年にはガラス工芸の作家・佐藤潤四郎と共に日本デザイナークラフトマン協会を設立しました。この団体は、日本におけるクラフトデザインの振興と技術の向上に寄与しました。

1961年には工業技術院産業工芸試験所の意匠第二部長を退官し、独立したデザイン事務所「東京クラフト」を設立。併せて、武蔵野美術大学の教授に就任し、次世代のデザイナーたちに知識と技術を伝えました。

受賞歴

芳武はその活動により数々の賞を受賞しています。1974年には国井喜太郎賞を受賞し、1976年には鋳鉄を用いた皿や鍋のデザインで芸術選奨文部大臣賞を受賞しました。この作品は、彼の「使う工芸」の理念を体現したものであり、機能性と美しさを兼ね備えています。また、1980年には勲四等旭日小綬章を授与され、1993年には正五位に叙されました。

デザイン哲学

芳武茂介のデザイン哲学は非常に明確で、生活に必要な道具や器具の美しさと機能性を兼ね備えたものを目指していました。「用のかたち用の美」といった彼の思想は、使用する人々の生活を豊かにするためのデザインを生み出す源泉となりました。

彼はまた、著書として「焼もの塗もの金もの 暮しのデザインを求めて」や「北欧デザイン紀行」、「用のかたち用の美 芳武茂介クラフトデザイン作品集」などがあります。これらの著作は、彼の豊かなデザイン思考や制作活動を理解する手助けとなります。

まとめ

芳武茂介は、ただ単に美しいものを作るのではなく、使うことを前提としたデザインを追求したクラフトデザイナーです。彼の作品や活動は、今日のクラフトデザインの発展に貢献し続けています。彼の精神は、今も多くのデザイナーに影響を与えており、日常生活に寄り添ったデザインの重要性を再認識させてくれる存在です。

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