芳見橋

芳見橋

富山県富山市と中新川郡立山町にまたがり、常願寺川の河口付近に架設されている道路橋梁が芳見橋（よしみばし）です。この橋は、主要地方道である富山県道182号原千垣停車場線の一部として機能しており、両岸地域間の重要な交通路となっています。

構造的特徴

現在の芳見橋は、鉄筋コンクリート製のオープンアーチ橋という構造形式を採用しています。この形式は、橋桁をアーチ状の構造で支えるもので、強度と景観の両面に優れています。また、この橋は北側が高く南側が低い、つまり北高南低の緩やかな傾斜を持っていることも特徴の一つです。これは、おそらく周辺の地形や道路の線形に合わせて設計されたものでしょう。

橋全体の長さを示す橋長は116.5メートルです。幅員は、車両が通行する車道部分が6メートル、その両側に設置された歩道部分がそれぞれ0.75メートルとなっています。これにより、車道は片側一車線程度の幅を確保しつつ、歩行者や自転車も安全に通行できる空間が設けられています。

歴史的沿革

芳見橋の歴史は、現在の橋が架けられる以前に遡ります。その前身となる橋は、1922年（大正11年）に「芳水橋（よしみばし）」という名称で架設されました。当時の芳水橋は木造の吊橋であり、現代の芳見橋とは構造が大きく異なっていました。この橋が架けられた当初の主な目的は、当時の電力開発を支えるためのもので、具体的には亀谷発電所の建設工事における資材運搬路や作業員の通行路として利用されたとされています。

芳水橋が架けられて以降、この橋は単なる工事用道路としての役割を超え、常願寺川上流域における左岸地域と右岸地域を結ぶ唯一の橋梁として、地域住民の生活にとって不可欠な存在となりました。橋が存在しない場合、常願寺川という自然の障壁により、両岸間の移動は極めて困難になるため、芳水橋は文字通り地域の「命綱」となったのです。

特に、教育の面では、組合立立山中学校へ通学する生徒たちの主要な通学路として広く利用されました。この橋を通じて生徒たちが日々行き来することで、地域内の人的交流が促進され、立山山麓一帯の文化、教育、経済活動などの様々な側面において、両岸地域間の結びつきを強める上で大きく貢献したと言えるでしょう。

現在の橋への架け替え

長年にわたり地域を支えてきた木造の芳水橋も、時代の経過とともに老朽化が進行しました。老朽化は橋の安全性に影響を及ぼすため、より安全で恒久的な橋梁への架け替えが喫緊の課題となりました。これを受け、現在の芳見橋の建設プロジェクトが始動します。

新しい芳見橋の建設工事は1968年（昭和43年）に着工されました。そして、約3年間の工事期間を経て、1971年（昭和46年）に現在の鉄筋コンクリート製アーチ橋である芳見橋が完成し、供用が開始されました。堅牢な近代的な構造を持つ新しい橋の誕生は、地域の交通安全を飛躍的に向上させるとともに、常願寺川を越える安定した交通インフラを確立し、地域社会の発展にさらに貢献することとなりました。

芳見橋は、その前身である芳水橋の時代から数えると、約一世紀にわたり形を変えながらも、常願寺川沿いの地域社会を結びつける重要な役割を担い続けています。現在の橋も、富山県道の一部として、日々多くの人々の往来や物流を支え、地域の生活と経済活動に貢献し続けています。

関連項目

常願寺川
日本の橋一覧
* 富山県道182号原千垣停車場線

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