井上辰雄

井上辰雄

井上辰雄（いのうえ たつお、1928年10月13日 - 2015年11月23日）は、日本の歴史学者で、筑波大学の名誉教授でした。日本古代史を専門とし、律令制や古代王権、地方政治史などに関する研究で知られています。

来歴

東京都で生まれた井上辰雄は、1952年に東京大学文学部国史学科を卒業しました。その後、同大学院（旧制）に進み、1957年に満期修了しました。

研究者としてのキャリアは、熊本大学法文学部で助教授、教授として始まりました。1976年には筑波大学教授に就任し、1981年には「古代王権と宗教的部民」の研究で筑波大学から文学博士の学位を取得しました。1992年に筑波大学を定年退官し、名誉教授となりました。その後は、城西国際大学教授、同図書館長を歴任しました。叙位は正四位。

業績

井上辰雄の研究は、古代史、特に律令制下の地方政治や古代王権の構造、宗教的部民の役割などに焦点を当てています。実証的な史料研究に基づいた緻密な分析が特徴で、古代史研究に大きな影響を与えました。また、古代の地名や風土に関する研究にも力を注ぎ、地域史研究の発展にも貢献しました。

著書

井上辰雄は、数多くの著作を発表しています。代表的な著書としては、以下のようなものがあります。

『正税帳の研究 律令時代の地方政治』（塙書房、1967年）
『火の国』（学生社、1970年）
『隼人と大和政権』（学生社、1974年）
『熊本の地名 風土と由来』（熊本日日新聞社 熊日選書、1978年）
『古代王権と語部』（教育社歴史新書、1979年）
『古代王権と宗教的部民』（柏書房、1980年）
『常陸国風土記にみる古代』（学生社、1989年）
『天皇家の誕生 帝と女帝の系譜』（遊子館歴史選書、2006年）
『古事記のことば この国を知る134の神語り』（遊子館歴史選書、2007年）
『古事記の想像力 神から人への113のものがたり』（遊子館歴史選書、2008年）
『茶道をめぐる歴史散歩』（遊子館歴史選書、2009年）
『在原業平 雅を求めた貴公子』（遊子館歴史選書、2010年）
『図説和歌と歌人の歴史事典』（遊子館、2010年）
『『常陸国風土記』の世界 古代史を読み解く101話』（雄山閣、2010年）
『嵯峨天皇と文人官僚』（塙書房、2011年）
『万葉びとの心と言葉の事典』（遊子館、2011年）
『平清盛と平家のひとびと』（遊子館歴史選書、2012年）
『平安初期の文人官僚 栄光と苦悩』（塙書房、2013年）
『平安儒者の家 大江家のひとびと』（塙書房、2014年）

これらの著作を通して、井上辰雄は古代史研究の裾野を広げ、多くの人々に古代史の魅力を伝えました。

共編著

『古代の地方史 第1巻 西海編』（編集、朝倉書店、1977年）
『古代中世の政治と地域社会』（編、雄山閣出版、1986年）
『古代史研究の課題と方法』（編、国書刊行会、1989年）
『古代東国と常陸国風土記』（編、雄山閣出版、1999年）
『日本古代史の謎 総解説』（共著、自由国民社、2001年）


井上辰雄は、その学識と人柄から、多くの研究者や学生に慕われました。彼の研究は、今後も日本古代史研究の基礎として、長く参照され続けるでしょう。

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