芳野菅子

芳野菅子（よしの すげこ）

芳野菅子（1837年3月10日 - 1915年2月4日）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した女性です。福井藩の奥女中として仕え、歌人としても知られています。また、明治期には女子教育にも力を注ぎました。

生涯

天保8年（1837年）、江戸日本橋に儒学者・芳野金陵の娘として生まれました。幼名はみさ、すげ。幼少の頃から父に学び、和歌は間宮八十子に師事しました。その後、福井城下で歌人・橘曙覧に師事し、その才能を開花させました。

嘉永5年（1852年）に福井藩の奥女中として出仕し、松平慶永や勇姫から厚い信頼を得て、祐筆、若年寄、そして最終的には大奥の筆頭である「年寄」にまで昇進しました。出仕当初は「くま」という名でしたが、後に「もせ」、「そて」と改名し、若年寄となった際に「八十瀬」を名乗りました。

文久3年（1863年）、春嶽が政事総裁職として参勤交代制の緩和に取り組んだ際、菅子は正室の勇姫に従って福井城下に到着しました。この頃、橘曙覧は菅子や福井藩の奥女中たちに宛てて40通近くの書簡を送っており、その交流の様子が窺えます。橘曙覧の著作は奥向きで広く読まれ、歌の指導や贈答も行われていたようです。

明治4年（1871年）に松平家を離れた後、飯野吉兵衛と結婚し、娘のぶをもうけましたが、すぐに離婚しました。その後、実家に戻り、明治9年（1876年）に父と弟が営む漢学塾・逢原堂の分校として、日本橋本石町に裁縫学校を開設し、33年間にわたって女子教育に尽力しました。

晩年は、娘のぶの嫁ぎ先である小出伊勢治方に居住したため、小出菅子とも呼ばれることがあります。

著書

『常磐廼古事』
『芳野菅子歌集』（島崎圭一編、1931年）

参考文献

『明治大正人物事典』2　文学・芸術・学術編（日外アソシエーツ株式会社編、2011年）
足立尚計「橘曙覧と芳野菅子」（『風花』5、2000年3月）
内田好美「橘曙覧と福井藩奥女中との交流―芳野菅子宛書簡を中心に―」（『福井県史研究会会報』7、2014年2月）
『企画展　芳野金陵と幕末日本の儒学』（二松学舎大学附属図書館、2015年10月）
「小出文書」53件（国文学研究資料館、福井県文書館に複製本あり）

関連人物

芳野金陵（父）
松平春嶽
桔梗屋やつ
* 橘曙覧

芳野菅子は、激動の時代を生き抜き、奥女中としての役割を全うする傍ら、歌人、そして女子教育者として、その才能と情熱を発揮した人物でした。

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