芸娼妓解放令

芸娼妓解放令について

1872年（明治5年）11月2日、明治政府は「芸娼妓解放令」として知られる太政官布告第295号を発表しました。この法令は日本における人身売買の禁止や、年限を定めた奉公制度の見直しを目的としており、特に遊女たちの権利の向上を目指した大きな一歩となるものでした。

背景

この布告の発併には、当時発生した「マリア・ルス号事件」が影響を与えています。この事件は人権問題がクローズアップされるきっかけとなり、遊女に対する法的な保護の必要性が認識されるようになりました。即ち、遊女たちが置かれていた厳しい状況に対する社会的な意識が高まり、政府による対応が求められるようになったのです。

主な内容

芸娼妓解放令によって、前借金で拘束されていた遊女たちは妓楼から解放されました。この法令は公娼制度を大幅に制限し、女性たちが強制的な年季奉公から解放されることを可能にしました。しかし、この法令は売春そのものを禁止しているわけではありませんでした。また、元遊女たちの次なる就職先が保障されていないため、実際には再び私娼となることや、貸座敷で自由に契約して遊女に戻ることができる状況がありました。

このように、解放令は一定の意義を持ちつつも、具体的な施策や支援が不足していたため、女性たちの生活や労働環境が即座に改善されることは難しい状況でした。

法令の影響

法令の発布は、女性たちの状況を多少なりとも改善するきっかけとなりましたが、準備期間が殆どなかったため、法令はほとんど機能しませんでした。解放された女性たちに対する転職や収入面での保障は、地方の裁量に委ねられ、その結果として多くの女性が苦境に立たされることとなりました。

一方、芸娼妓解放令が及ぼした影響は決して無視できません。特に地方によっては、貧農の娘たちを身売りから守るために教育や技能習得の場が設けられるなどの取り組みも行われました。これらの活動が徐々に女性労働力に対する認識を高め、後の工場制手工業発展の基盤を形成することにもつながったのです。

結論

芸娼妓解放令は明治時代における重要な法令であり、直ちにその効果を実感できるものではなかったものの、以後の女性の権利向上へと促す一歩となり、一部では女性に対する職業訓練の機会を生み出す契機にもなりました。最終的にこの令は民法施行法第9条によって廃止されることとなりますが、その影響は後の社会運動や女性解放運動にも色濃く残ることとなりました。

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