芸文類聚

『芸文類聚』（げいもんるいじゅう）は、中国の唐代初期に成立した大規模な類書であり、当時の文化や文学を知る上で非常に重要な資料です。武徳7年（624年）、欧陽詢（おうようじゅん）らが勅命を受け編纂しました。全100巻から構成され、隋代の『北堂書鈔（ほくどうしょしょう）』、唐代の『初学記（しょがくき）』、『白氏六帖（はくしりくじょう）』と共に「四大類書」と称されています。

現存する中国の類書としては古い部類に属し、唐代以前の詩文や歌賦など、豊富な文学作品を収録しています。特に貴重なのは、現在では失われてしまった典拠からの引用が多数含まれている点です。これにより、当時の文献の断片を垣間見ることができ、文学研究における重要な手がかりを提供しています。

本書は46の部に分類され、さらに各部は727の子目に分けられています。分類の順序としては、まず故事を提示し、その出典を詳細に注記しています。また、引用されている詩文には、その時代背景が明記されています。他の類書と比較した際の大きな特徴として、「事」（事実）と「文」（詩文）の両方を併記し、それらを一つの条として扱っている点が挙げられます。これは、従来の類書に見られる体系とは異なり、編者の意図や思想が反映されたものと考えられています。

『芸文類聚』は、単なる文献の収集だけでなく、当時の知識人たちがどのように情報を整理し、解釈していたのかを知るための窓口となります。文学研究者はもちろん、歴史研究者にとっても欠かせない資料と言えるでしょう。

参考文献

大渕貴之「唐創業期の「類書」概念：『芸文類聚』と『群書治要』を手がかりとして」（『中国文学論集』35、2006年）
中島和歌子「『枕草子』「は」型類聚章段と和漢の類書の部類標題との比較・対照：三巻本・前田家本と『芸文類聚』『倭名類聚抄』を中心に」（『和漢古典学のオントロジモデルの構築』、2006年）
木島史雄「『芸文類聚』：文学者のための、そして完本がのこる最古の類書」（『月刊しにか』9-3、1998年）
勝村哲也「芸文類聚の条文構成と六朝目録との関連性について」（『東方学報(京都)』62、1990年）

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