苣木浅彦

苣木浅彦：鉱床学研究のパイオニア

苣木浅彦氏（1923年2月23日-2010年4月22日）は、日本の地球科学、特に鉱床学において顕著な功績を残した科学者です。佐賀県に生まれ、旧制宇部高等工業学校（現山口大学工学部）を経て、東北帝国大学理学部を卒業しました。その後、東北大学で助手を経て助教授に昇進、1955年には「本邦産硫化鉱石の組織に関する熱的研究」で理学博士号を取得しています。

1957年からは山口大学工学部教授として教鞭を執り、1966年から1969年にかけては米国ペンシルベニア州立大学とカナダ地質調査所に在外研究員として滞在、研鑽を積みました。1972年には山口大学工学部長に就任しますが、1975年に東北大学教授として転任。東北大学理学部岩石鉱物鉱床学教室で金属鉱床学講座を担当しました。

学術界への貢献も多大で、1976年から1978年には日本鉱物学会長、1980年から1982年には日本岩石鉱物[鉱床学]]会長を務めるなど、指導的な役割を果たしました。東北大学を定年退官後も、国際協力機構]の技術協力プロジェクトに積極的に関与し、ボリビアのサン・アンドレス大学[[鉱床学研究所設立、チリのコンセプシオン大学鉱床学研究所設立に尽力しました。1990年から1993年には、コンセプシオン大学鉱床学研究所のプロジェクトリーダーとして滞在し、研究活動を続けました。山口大学には、氏によって収集された約2万点もの鉱石試料が寄贈され、その一部は山口大学工学部学術資料展示館で公開されています。

苣木氏の研究は、金属鉱床の成因解明に大きく貢献しました。特に、硫化鉱物の加熱実験や合成、相平衡に関する研究は世界的に高く評価されています。長年に渡る研究活動の中で、国内外の多くの鉱床を精査、記載し、その成因を詳細に論じた論文を発表しました。その成果として、1980年には岡山県三原鉱山から新鉱物「三原鉱（Cu4FePbBiS6）」を、1981年には秋田県古遠部鉱山から新鉱物「古遠部鉱（(Cu,Ag)6PbS4）」を発見するなど、鉱物学の発展にも大きく寄与しました。

これらの功績により、日本岩石鉱物鉱床学会から渡邉萬次郎賞、日本鉱物学会から櫻井賞を受賞しています。さらに、JICAプロジェクトへの貢献に対しては、ボリビア・サン・アンドレス大学名誉教授、チリ・コンセプシオン大学名誉博士号、国際協力事業団総裁賞、外務大臣賞など数々の栄誉に輝きました。2008年に北海道で発見された新鉱物「苣木鉱（Sugakiite, Cu(Fe,Ni)8S8）」は、氏の功績を称えて命名されました。

主な編著書に『鉱石顕微鏡と鉱石組織』（1988年、テラ学術図書出版）があります。 苣木浅彦氏の研究と国際貢献は、地球科学の発展に多大な影響を与え、後世に長く記憶されるでしょう。

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