苣木鉱

苣木鉱：北海道とロシアに産する希少な硫化鉱物

苣木鉱（Sugakiite）は、[正方晶系]]に属する硫化鉱物の一種です。銅]、[鉄]、[ニッケル]を主要成分とし、[硫黄]と結合した複雑な化合物です。その化学組成式はCu(Fe,Ni)8S8と表され、金属[[元素と硫黄の比率は9:8という特徴的な比率を示しています。

ペントランド鉱グループとの関係性

苣木鉱の組成は、ペントランド鉱(Pentlandite, Fe4.5Ni4.5S8)と類似しており、ペントランド鉱グループに分類されることが多いです。しかし、結晶系に大きな違いがあります。ペントランド鉱は等軸晶系であるのに対し、苣木鉱は正方晶系です。この結晶系の違いが、苣木鉱をペントランド鉱とは異なる独立した鉱物種として位置付ける重要な要素となっています。また、苣木鉱は必ず銅を含んでいるという点も重要な特徴です。

発見と産出地

苣木鉱は、最初に北海道様似町幌満峡の幌満橄欖岩から発見されました。その後、2012年にはロシアのタイミル自治管区にあるTalnakh Cu-Ni鉱床でも発見され、原産地以外での産出が確認されたのはこれが初めてです。同じ地域で発見された、組成の類似した様似鉱と共に、長らく発見地が限られていましたが、苣木鉱のみ新たな産出地が発見されたことになります。幌満峡付近はアポイ岳ジオパークに指定されており、サンプル採取には制限があります。

共生鉱物と形態

苣木鉱は、ペントランド鉱、[トロイリ鉱]、ヒーズルウッド鉱(Heazlewoodite)、[斑銅鉱]、タルナック鉱(Talnakhite)、自然銅など、様々な硫化鉱物と共に産出します。特に、幌満鉱((Fe,Ni,Co,Cu)9S8)や様似鉱(Samaniite, Cu2(Fe,Ni)7S8)とは組成が近く、これらの鉱物と混合した状態で産出することもあります。時には、苣木鉱、幌満鉱、様似鉱の三者が混ざり合った状態で単独の粒子を形成することもあります。一方で、単独で産出する場合もあります。

これらの硫化鉱物は、橄欖岩中に存在する橄欖石や輝石などの鉱物の隙間を埋めるようにして産出します。そのため、苣木鉱は粒状、もしくは劈開のない半自形結晶として産出しますが、結晶サイズは最大でも0.1mm程度と非常に小さく、肉眼では観察できないことが多いです。顕微鏡レベルでの観察が不可欠な鉱物です。

発見と命名、そして受賞

苣木鉱は1998年、北風嵐氏によって発見されました。北海道様似町幌満峡の幌満橄欖岩の中から発見された日本産新鉱物であり、幌満鉱および様似鉱と共に発見されました。しかし、独立種としての承認は2005年と、幌満鉱、様似鉱よりも早かったことが注目に値します。2009年には、北風氏は苣木鉱の発見により日本鉱物学会櫻井賞を受賞しました。鉱物の名称は、東北大学の苣木浅彦氏に由来しています。

関連鉱物

幌満鉱 (Horomanite)
様似鉱 (Samaniite)
* ペントランド鉱 (Pentlandite)

苣木鉱は、その希少性、独特の組成、そして発見から命名、研究に至る歴史的背景から、鉱物学において重要な位置を占める鉱物と言えるでしょう。今後の研究により、その生成メカニズムや地質学的意義がさらに解明されることが期待されます。

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