若人の夢

『若人の夢』

『若人の夢』（わこうどのゆめ）は1928年4月28日に公開された日本の映画で、松竹キネマが製作・配給しました。この映画は、小津安二郎が自ら原作・脚本を手掛け、監督を務めた作品です。モノクロでスタンダードサイズ、サイレント映画として制作され、上映時間は50分です。

本作は大学生活を背景にした青春コメディで、大学生たちの日常とロマンスを軽快に描いています。特に主なキャラクターである岡田と加藤の友情や恋愛が物語の中心であり、若者たちの悩みや喜びが赤裸々に表現されています。

映画の撮影には、茂原英雄が起用されており、彼とのコンビは小津監督にとっても新たな試みでした。また、この作品の撮影助手として厚田雄春が参加しており、彼は後の小津作品にも多く関わることになる人物です。

主演は、W大学の学生である岡田長吉役を斎藤達雄が、彼の恋人である美代子役を若葉信子が演じています。加藤兵一というキャラクターは吉谷久雄が担当し、その恋人百合子を松井潤子が演じます。岡田の父の役は坂本武が演じ、その他にも多くのキャストが揃い、各々のキャラクターが多彩に描かれています。

映画の内容に関しては、岡田と加藤の二人は下宿生活をしながら様々な出来事に直面します。ある日、加藤に洋服屋から請求書が届き、これがきっかけで一騒動が展開されます。加藤は請求書から逃げるため、岡田の服を金の代わりに渡すことになり、ひと悶着の後、岡田の父が田舎から上京した際には、合わない丈の服を借りる羽目になったりと、コミカルなシーンが展開します。

また、物語を進めながら二人の恋愛模様が描かれ、特に彼女たちとの関係が深まっていく様子が生き生きと表現されています。若者たちの恋や友情、日常生活の悩みを通じて、誰もが共感できるテーマが歌われているのです。

ただし、非常に残念なことに、現在ではこの映画の脚本、ネガ原版、上映用プリントのいずれも現存していません。そのため、映画の具体的な内容や映像は観ることができず、多くの映画ファンにとって貴重な作品として語り継がれています。

この映画は、電気館で初めて上映され、多くの観客を魅了しました。小津安二郎の初期の作品は、彼が後に確立する独特の映画スタイルへと発展していく重要な一歩とされています。若人の夢は、その青春を描いた軽やかなコメディとして新しい風を吹き込み、映画史に名を刻む作品となったのです。

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