若林マリ子

若林マリ子

日本の音楽シーンにおいて、独自の歌声と音楽世界を持つシンガーソングライター、それが若林マリ子です。彼女は、フランス語翻訳家であり演出家である父、ピアノ教師の母、そして民俗音楽家・シタール奏者である兄という、非常に音楽や芸術に造詣の深い家庭環境に育ちました。こうした背景が、彼女の音楽性の根幹を形成していると言えるでしょう。

彼女のキャリアは、高校を卒業した後に結成した女性グループ「Windy」から始まりました。このグループでは、自身のオリジナル楽曲を主要なレパートリーとして、ライブハウスなどを中心に活動を展開しました。その音楽性とパフォーマンスは評価され、アマチュアミュージシャンの登竜門として知られる「EAST WEST83」のレディース部門で優秀賞を獲得するなど、早くからその才能の片鱗を見せていました。

Windy解散後、彼女の才能は、当時ビブラストーンのギタリストとして活躍していた岡田陽助氏の目に留まります。岡田氏のサポートを得る形で、バンド「マリコ・ウィズ・キュート」を結成。このバンドで、彼女はメジャーシーンへと進出します。1985年には、ビクターのInvitationレーベルより、アルバム『ICE AGE』とシングル『氷河期』を同時にリリースし、正式なデビューを飾りました。当時の音楽シーンに一石を投じる作品となりました。

「マリコ・ウィズ・キュート」としてのバンド活動を行いながら、若林マリ子名義での多岐にわたる活動も展開していきます。特に注目されるのは、他のアーティストの作品へのヴォーカリストとしての参加です。例えば、サザンオールスターズの関口和之氏のソロ・アルバム『砂金』（1986年）や、ムーンライダーズの鈴木慶一氏がプロデュースを手がけた『わかつきめぐみの宝船ワールド』（1987年）といった作品に、その個性的な歌声をゲストとして提供しています。これらのコラボレーションは、彼女の音楽性の幅広さを示すものであり、様々なジャンルのアーティストからの信頼を得ていたことが伺えます。また、この時期からソロとしての音楽活動も並行して始動させていました。

そして、1987年10月21日には、VAPより自身初のソロ・アルバムとなる『end of a rainbow』を、「若林まりこ」という名義でリリースしました。このアルバム発表後は、積極的に雑誌などのメディアに登場し、メジャーアーティストとしての活動を活発に行っていきます。しかし、その後、彼女は突如として表舞台での音楽活動から一時的に距離を置くことを選択します。活動休止期間中は、民俗音楽家である兄、若林忠宏氏のサポートとして、その音楽活動にヴォーカルとして参加する以外は、ほとんど全ての活動を停止していました。

長い沈黙を経て、若林マリ子は2004年5月に再び音楽活動を再開します。この再始動後は、原点回帰ともいえる自身のオリジナル楽曲制作に力を入れ、新たなソロ・アルバムの構想を練りながら、作曲活動に励みます。同時に、東京都内を中心としたライブ活動も積極的に再開し、ファンとの直接的な交流の場を設けています。精力的な活動再開から数年が経った2010年の秋には、実に前作から23年ぶりとなる待望のニューアルバム『flower city』をリリースし、多くの音楽ファンを魅了しました。現在も、作曲やライブパフォーマンスなどを通じて、その円熟した音楽世界を追求し、意欲的な活動を続けています。

若林マリ子の音楽や活動に関する詳しい情報は、Mariko Wakabayashi Official Web "Sight"と、公式のYouTubeチャンネルで確認することができます。

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