若林城

若林城：伊達政宗の晩年の居城

仙台城が伊達氏の本拠地として知られる一方、若林城は伊達政宗ゆかりの平城として、仙台市若林区古城にその歴史を刻んでいます。寛永5年(1628年)に築城され、政宗の死後廃城となったこの城は、江戸時代には藩営の薬園として利用され、明治時代からは宮城刑務所として現在に至っています。高い土塁と堀の跡が残り、その上に高い塀をめぐらされた独特の景観を呈しています。

若林城の築城と構造

若林城は、戦国時代には小泉と呼ばれた地に、寛永4年(1627年)から寛永5年(1628年)にかけて伊達政宗によって築かれました。幕府には屋敷として届け出られましたが、実際には堀と土塁で囲まれた本格的な城でした。東西約420メートル、南北約350メートルの単郭式の平城で、土塁の内側の面積は約5万5000平方メートルに及ぶ規模を誇ります。防御線として機能した堀には広瀬川の水が引き込まれていました。東西に長く、北東、南東、北西の三つの角と南辺中央部に張り出しを持つ、独特の形状をしています。西側が正面で、土橋を渡って門に通じていたと推測されます。櫓などの建物もあったようですが、詳細は不明です。若林城には、仙台城とは別に小規模な城下町も形成され、政宗は若林城を居城とし、仙台城には息子の忠宗が住んでいました。

若林城の歴史と廃城後

若林城の築城以前、この地には古墳時代から集落が存在し、平安時代には城内とその周辺に集落があったと推定されています。戦国時代には国分氏が城を築き、小泉と呼ばれていました。複数の古城が存在したという説もあり、その歴史は複雑です。政宗が若林城を居城とした後、寛永13年(1636年)に政宗が死去すると、若林城は廃城となり、建物は仙台城二の丸に移築されました。その後、城跡には若林薬園が設けられ、薬草が栽培されるようになりました。

明治11年(1878年)には宮城集治監が設置され、それが宮城監獄、そして現在の宮城刑務所へと変わっていきました。土塁と堀は大部分が現存しており、1984年から8次にわたる発掘調査が行われ、礎石建物跡、池跡、多数の瓦など、貴重な遺構が確認されています。発掘調査によって、政宗時代の建物や、薬園の跡なども発見され、若林城の実態解明が進んでいます。

若林城の立地と周辺環境

若林城は広瀬川左岸の低地、自然堤防上に位置しており、周囲に山や丘陵がない平坦な地形です。自然の要害がほとんどない立地です。堀と土塁は現在も明瞭に残っており、東西にやや長い長方形で、東西南北に張り出しを持つ独特な形状が確認できます。城の入り口は西、北、東の三ヶ所あり、西側が大手門とされています。堀には広瀬川の水を引き込んでいました。城内には様々な建物があったと考えられますが、全体像はまだ不明です。城の周辺には城下町が形成され、仙台城下とは別の独立した町として栄えました。城の北側には出曲輪があったと伝えられ、西側には西曲輪があり、政宗はそこで幕府の役人を接待したり、家臣と能や茶会を楽しんだと言われています。

発掘調査と今後の研究

1984年から仙台市教育委員会を中心に8次にわたる発掘調査が行われ、多くの遺構や遺物が発見されています。当初は、集治監や刑務所の建設によって城の遺構は破壊されていると予測されていましたが、予想に反して、政宗時代の礎石建物や、池の跡などが発見されました。これらの発見により、若林城の構造や規模、そして当時の生活様式などを解明する上で貴重な資料が得られました。今後の調査で、若林城の実像がさらに明らかになることが期待されています。 若林城は、単なる城跡ではなく、伊達政宗の生涯や仙台の歴史を理解する上で重要な遺跡と言えるでしょう。

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