若田部昌澄

若田部 昌澄（わかたべ まさずみ）

若田部昌澄は、1965年2月26日に生まれた日本の経済学者で、主に経済学史に関する研究を行っています。早稲田大学政治経済学術院の教授を経て、2018年から2023年まで日本銀行の副総裁を務めました。彼の研究対象は、1930年代の世界恐慌や1970年代のインフレーション、1990年代から続く日本の経済停滞といった経済の危機的な時代です。特に、2000年前後の経済政策論争においては、リフレーション政策を支持する立場を取っており、岩田規久男や野口旭らと共にその論陣を張っています。著書『経済学者たちの闘い』では、経済学史を解説し、現代の経済政策論争における重要な視点を提供しています。

経歴

神奈川県に生まれた若田部は、1983年に神奈川県立藤沢西高等学校を卒業し、1987年には早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業しました。大学院に進学後、トロント大学の経済学大学院博士課程まで学びましたが、博士号は取得していません。実は、彼の父親も早稲田大学で経済学を修めています。

若田部は早稲田大学で助手や助教授を経験した後、2005年に政治経済学術院の教授に就任しました。さらに、ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学で客員研究員としても活動してきました。

2018年2月、日本政府は若田部を次期日本銀行副総裁に指名し、3月に正式に就任。その後、2023年3月19日に任期満了に伴い退任し、翌日から再び早稲田大学で教授の職に戻りました。

主張

若田部の専門は経済学説史ですが、彼はマクロ経済学の領域でも独自の視点を持っています。特にリフレ派の学者として、量的金融緩和政策の重要性を早い段階から提唱しており、インフレターゲットを日銀法に組み込むべきだと考えていました。彼は日本の経済成長が欠如していることを憂い、「名目GDPが停滞している現状で、経済成長が不要だという主張は信じ難い」と反論しています。

また、財政政策に関しても持論を展開しており、債務の絶対額よりも、GDPに対する比率が重要であると強調しています。財政支出を削減したり、増税を行ったりしても、その結果、経済が縮小し、税収不足に陥る可能性が高いと指摘しています。

原発については「経済成長と原発の間に直接的な因果関係はない」としており、エネルギー需要については認めつつも、特定の政策に固執しない柔軟な姿勢を見せています。

自由貿易を支持する立場から、TPP推進派としても知られています。彼は反TPP派の意見を批判しつつも、それぞれの立場に経済学的な根拠があることを認めています。また、安倍晋三首相に対しては、2017年に予定されていた消費税率の引き上げ延期を提案したり、2019年の消費増税についても延期すべきだと主張しています。

受賞歴と著書

若田部はその業績により、2004年には『昭和恐慌の研究』で日経・経済図書文化賞を受賞し、2010年には『危機の経済学』で石橋湛山賞を受賞しました。彼の著書には『経済学者たちの闘い エコノミックスの考古学』や『改革の経済学』などがあり、これらの作品を通じて経済学の重要な概念や時代背景について広く議論を展開しています。

また、共同で執筆した書籍や翻訳書も多数あり、幅広い視点からの経済学の理解を促進する役割を果たしています。

若田部昌澄は、現代日本の経済に多くの影響を与え続けている学者であり、彼の研究や発言は日々の経済政策の議論において重要な位置を占めています。

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