英祖 (朝鮮王)

英祖：李氏朝鮮の長期君主

英祖（ヨンジョ、えいそ）は、李氏朝鮮時代の第21代国王であり、1694年10月31日に生まれ、1776年4月22日に亡くなりました。彼は在位期間が約52年と非常に長く、李氏朝鮮の君主として最も長命であったことで知られています。諱は昑（クム）、字は光叔（クァンスク）、また清国からの諡号は荘順王です。

生い立ちと即位

英祖は、粛宗の次男として生まれ、母は和敬淑嬪崔氏でした。彼の母親は出自が低いものであったため、幼少期は異母兄の王世子李昀（後の景宗）と比べ、十分な扱いを受けられませんでした。彼は王位の継承権を持つ王子でありながら、周囲からの冷遇を受けながら成長しました。この厳しい状況からか、英祖は王位を得るまでの道のりは困難を伴うものでした。

1720年に王世子が即位した後、英祖は王世弟に任命されましたが、1724年に王世子が死去すると、彼はそのまま王位を継ぐこととなります。即位後は少論と老論の間での権力争いが続き、英祖はその中で少論を追放し、老論を登用する政策を進めました。ただし、英祖は派閥間のバランスを維持しようと努めもしました。

政治と改革

彼の治世には、李麟佐の乱（戊申政変）という権力闘争が発生しました。これは、英祖が老論を重用することで発生した事件であり、英祖はこの際に「双挙互対」という政策を実施し、主要ポストに老論と少論の人材を同時に登用して互いに牽制させることで権力の安定を図りました。また、死刑執行には必ず3審を経る三覆制度を復活させ、公正な刑罰の執行を促進しました。

しかし、彼の改革は荘献世子の廃位にまで至り、この悲劇は英祖自身にも深い影響をもたらしました。時を経て英祖はのちに荘献世子を悔い、彼の子である正祖を次の王にする決断をします。

経済政策と文化振興

英祖は経済面でも重要な施策を実施しました。特に、兵役の代わりに税金で納める布帛の負担を軽減し、国民の税負担を軽くする均役法を導入しました。また、凶年に備えて日本から持ち帰られたサツマイモを主食の代用とするように助言しました。こうした政策は民の生活を守るためのものであり、彼の統治理念を実現したものでした。

また、英祖は学問や文化の振興に力を入れ、自身も多くの書籍を著し、印刷技術の向上に努めました。彼の手によって『海東楽章』や『退陶言行録』など多くの著作が生まれ、学問の普及が進められました。この実学の重視は後の正祖の治世における「朝鮮のルネサンス」につながる礎を築きました。

死と遺産

1776年、英祖は老衰で83歳で亡くなります。彼の死後、王位は孫の正祖が継ぎました。英祖の治世による影響は今なお色濃く残り、徳政や民生に配慮したその政策は国の命運を大きく変えるきっかけとなったのです。英祖は、清国からの諡号「荘順王」を受けましたが、彼はこの称号を政治的に恥辱と捉え、公式記録から削除しています。この姿勢は、彼の強い独立性と国民への愛情を示すものでした。英祖は名実ともに朝鮮の歴史に名を刻む偉大な君主であり、国民の生活向上に尽力した博愛主義者でした。

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