英露協商 (1899年)

英露協商（スコット＝ムラヴィエフ協定）

英露協商とは、日清戦争後の清朝末期における中国における列強の勢力分野を調整するために、1899年4月29日にイギリスとロシア帝国の間で締結された協定です。この協定は、英・露の相互の勢力圏を尊重することを目指し、中国の半植民地化が進行する中で形成されました。

背景

19世紀末、中国の清朝は列強による外圧にさらされており、その主権は大きく侵食されていました。日清戦争の後、清朝はさらなる困難に直面し、国内外の政治的な力関係が変化していました。特にイギリスとロシアの間には、勢力圏をめぐる緊張が高まっていたことから、両国の間での合意が求められるようになりました。

協定の内容

英露協商では、イギリスが揚子江流域、つまり長江流域に対する勢力を主張し、一方でロシアは万里の長城以北の地域をその勢力圏とすることが取り決められました。また、重要な点は、両国がそれぞれの地域で鉄道敷設権を設定し、これに基づいて行動することでした。具体的には、ロシアは揚子江流域において鉄道敷設権を求めないこと、そして他国が同様の権利をもとめることを支援しないことを約束しました。対してイギリスも、満州において同じような対応をとることを確認しました。

この協定の調印は、サンクトペテルブルクで行われ、ロシア外務大臣のミハイル・ニコラエヴィッチ・ムラヴィエフとイギリスの駐露大使チャールズ・スコットの名前を取って「スコット＝ムラヴィエフ協定」と呼ばれることもあります。

協定の影響

英露協商は、イギリスの政策の大きな転換を示すものでした。それまでイギリスは清朝政府の主権を尊重し、列強が一致協力してロシアの南下に立ち向かう立場を採っていましたが、この協定の締結によって、支那分割論へと舵を切る姿勢が鮮明になりました。これにより、中国に対する列強の影響力が一層強まることとなり、以降の歴史に大きな影響を与えることとなります。

後の発展

この英露協商は、その後の国際関係にも影響を及ぼしました。1907年には、英露協商（英語: Anglo-Russian Entente）が締結され、以後「英露協商」と言う場合には主にこちらを指すようになりました。これにより、英国とロシアの間の外交関係は新たな段階を迎え、ひと続きの協力関係が形成されることになりました。

このように、英露協商は19世紀末の国際政治における重要な出来事であり、その後の中国の歴史や列強の対中政策に多大な影響を与えたのです。

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