英露協商

英露協商の概要

英露協商（エイロキョウショウ）とは、1907年にイギリスとロシア帝国間で締結された重要な協定である。この協定は、両国の影響力をアジア地域、特にイラン、アフガニスタン、チベットにおいて明確に分け合い、ついには露仏同盟、英仏協商と合わさることで三国協商の形成を可能にした。

背景

19世紀末、イギリスの首相および外相ソールズベリーは、ロシアとの関係を改善することがヨーロッパのバランスを保つための最善策との考えを示した。しかし、ロシア側はイギリスからのイラン共同借款に対する協力要請を拒否し、さらにイランに関する意見交換提案にも反応しなかった。このような状況が続く中で、日露戦争が終結し、ロシア国内の情勢は急速に悪化していった。

ロシア政府はフランスとドイツに対して財政的な支援を求め、特にドイツのメンデルスゾーン銀行からは為替手形による融資が行われた。一方で、イギリスは1905年にドイツとロシア間の防衛協定を示唆するビョルケ密約に関する情報を入手したことで、ロシアとの協商の必要性が痛感されるようになった。特に、エドワード・グレイ外相およびチャールズ・ハーディング外務事務次官は、ドイツの影響力に対抗するための協議を推進した。

交渉過程

1906年から始まった英露間の交渉は、アレクサンドル・イズヴォリスキー外相とイギリス駐露大使サー・アーサー・ニコルソンの間で行われた。その結果、1907年8月31日にはサンクトペテルブルクで英露協商が正式に成立。これにより、新たな国際的枠組みの形成が実現した。三国協商は、露仏同盟及び英仏協商と併せて、欧州の政局における重要な要因となる。

協定内容

英露協商は、広範囲にわたる具体的な内容を持っていた。特に、以下の三点が重要である。

ペルシア（イラン）に関する協定

北部をロシア、南部をイギリスの勢力範囲として設定し、両国の影響下にない中立地帯が設置された。また、カージャール朝の独立が尊重され、この地域における機会の均等も確認された。

アフガニスタンに関する協定

アフガニスタンはイギリスの影響下にあるとし、その地位をロシアが尊重する旨が確認された。ここで重要なのは、イギリス側がアフガニスタンとの関係において平和的な手法を重視するという取り決めであった。

チベットに関する協定

チベットに関しては、領土保全と内政の不干渉が両国間で確認され、清の宗主権を両国が認めるという点が定められた。

このように、英露協商は当時の国際政治における重要な一歩を示し、今後の地政学的な展開に影響を及ぼすこととなった。

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