茅野常成

茅野常成：赤穂浪士四十七士の生涯

茅野常成（かやのつねなり）は、江戸時代前期に活躍した武士であり、有名な「元禄赤穂事件」における赤穂浪士四十七士の一人として後世に名を残しています。寛文7年（1667年）、美作国津山藩に生まれる。家系は津山藩森家家臣の次男で、父は藩政の不正を訴えたことで追放されたという背景を持っていました。

その後、常成は播磨国赤穂藩主・浅野長矩に仕官。元禄10年（1697年頃）から赤穂藩の書留に名前が登場し、藩内では横目5両3人扶持役料5両という、比較的低い身分でした。しかしながら、武術の達人としても知られ、居合いの達人としてだけでなく弓の腕前にも優れていたと伝えられています。

元禄14年（1701年）、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ際には赤穂にいました。直ちに大石良雄らによる盟約に加わり、母は実家へ戻り、妻と生まれたばかりの子を赤穂に残したまま、元禄15年（1702年）10月には大石良雄に従って江戸へ下向。江戸滞在中は、芝源助町の礒貝正久宅に身を寄せていました。

吉良邸討ち入りの際には裏門隊に所属し、半弓を用いて戦ったと記録されています。討ち入り後、水野忠之の屋敷に預けられ、元禄16年（1703年）に切腹しました。享年37歳。主君・浅野長矩と同じく、江戸の高輪泉岳寺に葬られました。法名は刃響機信士です。

常成は武人としての能力に加え、俳人としての才能も持ち合わせていました。雅号は「禿峰（とくほう）」で、泉岳寺の僧・白明から辞世の句を詠むよう求められ、「天の外はあらじな千種たに　本さく野辺に枯るると思へは　世や命咲野にかかる世や命」という句を残しています。この句は、人生のはかなさと、それでもなお命の尊さを歌ったものとして解釈されています。

常成には一子・猪之吉がいましたが、宝永3年（1706年）、わずか7歳で夭折しました。赤穂の福泉寺に葬られた猪之吉の墓所は、のちの「文久赤穂事件」において河原翠城が襲撃されるという、歴史の波にも翻弄されることとなりました。

なお、赤穂藩士で討ち入り前に自害した萱野重実（三平）とは別人ですが、苗字が同じ「かやの」であることから、兄弟で、自害した三平の無念を弟の和助が晴らしたという、事実とは異なる逸話が伝わっています。茅野常成の生涯は、忠義と武勇、そしてはかなさを併せ持つ、劇的な物語として語り継がれています。彼の名は、赤穂浪士四十七士の一人として、永遠に人々の記憶に刻まれています。

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