茶巾

茶巾：茶道の必須道具と意外な歴史

茶巾は、茶道の点て方において茶碗を拭くために用いられる布です。古くから茶の湯の作法に欠かせない道具として、その歴史と文化を深く反映しています。

素材と形状

茶巾の素材として最も一般的なのは白い麻布です。中でも奈良晒と呼ばれる麻布は、その上質な肌触りと吸水性から高級品として珍重されています。用途や茶道の流儀によってサイズは異なりますが、多くの場合、30cm×15cmほどの長方形をしています。このサイズは、茶碗を効率よく拭き上げるのに最適なサイズとして、長い歴史の中で洗練されてきたと考えられます。

使用方法と流派による違い

茶巾は、使用する前に水で湿らせ、しっかりと絞ってから用います。この絞り加減や拭き方、そして使用後の畳み方などは、茶道の各流派によって微妙な違いがあり、流儀の奥深さを感じさせます。一見単純な道具に見えますが、その扱い方一つ一つに、茶道の精神が込められていると言えるでしょう。

茶巾の意外な側面：使い捨てと謝礼

かつては、茶巾は一度使用したら使い捨てにされることもあったそうです。これは、清潔さを重んじる茶道の精神と、茶巾の素材の性質から生まれた習慣と言えるでしょう。現代では、繰り返し使用されることが一般的ですが、この歴史的背景を知ることで、茶巾に対する理解が深まります。

また、茶会への謝礼を表す際に、「茶巾料」という表現が使われることがあります。これは、茶巾が茶会において重要な役割を果たす道具であることを示しており、茶会への感謝の気持ちを表す独特な表現と言えるでしょう。

茶巾縛りと茶巾包

茶巾の結び方の一つに「茶巾縛り」と呼ばれる方法があります。この結び方は、巾着状の口を縛る独特の方法で、その特徴的な形状から、茶巾縛りで結ばれた袋状のものを「茶巾包（ちゃきんづつみ）」と呼び、略して「茶巾」と呼ぶ場合もあります。

興味深いことに、この「茶巾」という名称の由来には、砂金を入れる袋との関係が指摘されています。かつて砂金（沙金、しゃきん）を一定量包封した巾着状の袋を「砂金包」や「砂金嚢」と呼んでおり、この「しゃきん」が転訛して「ちゃきん」になったという説があります。茶巾という名称には、意外な歴史と語源が隠されているのです。

茶巾に関連する事柄

茶巾に関連する言葉や文化には、以下のようなものがあります。

小茶巾: 濃茶の茶碗の飲み口を拭うために用いる、より小さな茶巾です。
栗きんとん: 和菓子の一種。栗あんや芋あんを茶巾絞りで栗の形に整えることが多く、京都ではこの栗きんとんを「茶巾」と呼ぶこともあります。
* 茶巾寿司（茶巾鮨）: 薄焼き卵で五目寿司などを包み、かんぴょうなどで結んだ料理。大正時代に伏見宮家の茶会で考案されたものです。

このように、茶巾は茶道という枠を超え、様々な文化や料理に影響を与え、その歴史と文化の深さを物語っています。一見シンプルな道具である茶巾ですが、その背景には、古来からの伝統と文化が息づいているのです。

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